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2023.10.16 08:00

【不登校最多】子ども本位の対策強化を

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 社会経済のありように変化を強いた新型コロナウイルス禍が、子どもの環境にも大きな負荷をかけてきた裏付けといえるだろう。「ウィズコロナ」で学校生活が平時へと戻るなか、子どもが受けた影響をどう和らげていくか。子ども本位の対策を強化する必要がある。
 文部科学省がまとめた2022年度の問題行動・不登校調査によると、全国の小中学校で不登校(30日以上の欠席)になった児童生徒が29万9千人余りに上り、前年度から22・1%増えた。いじめも10・8%増の68万2千件近く確認され、いずれも過去最多を更新した。
 不登校への理解が広がり、無理して学校に行く必要がないとの考えが保護者に浸透してきた。「いじめ防止対策推進法」の施行から10年たち、学校側が早期に発見・対応するようになったことも増加の背景にあろう。
 一方で、学校行事の中止や給食の黙食で人間関係をつくりにくかったり、登校する意欲をそがれたりした影響を引きずっている面もあるのではないか。コロナの流行に伴う学級閉鎖などが減っても、欠席への心理的なハードルが下がっているとも指摘される。学校側が判断した不登校の理由でも「無気力、不安」が過半数を占めていた。
 そうした不安定な状況は、得てしてトラブルにつながりやすい。いじめの認知件数が増加したこととも無縁ではないだろう。特に、心身などの重い被害や、長期欠席に至った「重大事態」は前年よりも217件増え、923件に上った。
 最近表面化した事例では、深刻ないじめ被害の可能性がありながら、学校側が「重大事態」として対応していなかったケースも散見される。教育界の一部には、いまも隠蔽(いんぺい)体質や事なかれ主義が残っているのではないか。意識改革を徹底する必要がある。
 本県も憂慮すべき状況に変わりはない。不登校は前年度から45人減って1463人。千人当たりの不登校者数は0・5人減の30・7人となった。2年連続の全国ワーストから脱したものの、依然として高水準が続く。いじめの認知件数は77件増えて3749件。「重大事態」は2件減少して19件となったが、千人当たり0・29件は3年連続で全国ワーストだった。
 県教委は17年度から、不登校対策として児童生徒の心理ケアを行うスクールカウンセラーを全校に配置するほか、教室に入りづらい生徒が校内で過ごす「校内サポートルーム」を増やすなど対応を取ってきた。コロナ禍という特殊要因が続いたなかで一定の効果は見て取れる。だが、多くの子どもが思い悩む現状を踏まえれば、対応はまだまだ不十分と言わざるを得ない。
 不登校もいじめ被害も、児童生徒のわずかな変化やSOSに気付き、早期に対応できるかが鍵を握る。子どもと向き合う教職員の勤務実態を含め、子どもの安全と成長を守る環境づくりを最優先で進めたい。

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