2023.10.15 08:32
10/15「新聞配達の日・新聞少年の日」情報届ける責任を胸に
自力で稼ぐ大変さを実感
香北中1年・田中凱也(ときや)さん(13)香美市
自転車で手際良く、丁寧に丁寧に配達する田中凱也さん(香美市香北町下野尻)
2人の兄も以前に配達していたといい、「大変な仕事やと思ったけど、自分の力でお金を稼いでみたかった」。7月から始め、自宅周辺の集落で73部を約1時間で配る。
起きるのは毎朝4時過ぎ。寝過ごさないようにと部活後は食事や宿題を手早く終わらせ、午後8時には寝る。配達する際は寝ている人を起こさないよう、新聞を静かにポストに入れるよう心がけているという。
雨の日、かっぱを着ての配達は大変だそうだが、「地域の人から『朝早くから頑張ってるね』と声をかけてもらえるので頑張れています」と話す。
給料は貯金、スマートフォン代、自由に使える分をきっちり分けている。「ためたお金でデスクトップのパソコンを買いたいので、高校卒業まで続けたい」。目標達成に向けて、また早朝から黙々と自転車をこぐ。(香長総局・海路佳孝)
待ってくれる人のために
須崎総合高2年・野村祐斗さん(16)日高村
新聞を早く届けるため、集合住宅の階段を駆け上がる野村祐斗さん(日高村下分)
好きなプラモデルを買うためアルバイトを探していた。新聞配達員の母親の勧めで、6月から登校前のひと仕事に励む。「早起きがつらいけど、給料が多い月はうれしい」と笑った。
始めたばかりの頃は、担当の52部を配るのに1時間ほどかかっていた。ある日、いつものように配り始めると、家の前で新聞を待ちかねている男性がいた。
「こんな早朝に、待ってくれている人がいるんだ」
その日を境に「少しでも早く」を心がけるように。自転車を降りた先の坂道や県営住宅の階段を駆け上がった。今では同じ部数を40分ほどで配り終える。
散歩途中の高齢女性は、会うたびに「いつもありがとう」。読み手に見守られる優しさがうれしい。
「高校を卒業するまでは休まずに続けたい」と野村さん。新聞を抱えて、今日も走る。(佐川支局・乙井康弘)
地域の暮らし見守る仕事
田中浅子さん(72)香美市
「簡単なようで難しい。責任を持って届けないかん」と丁寧に配達する田中浅子さん(香美市物部町大栃)
めいが働いていたことがきっかけで始めた朝の仕事は22年目。60代まで郵便局の配達員もしており、「ぼーっと過ごしたらいかんと思って。朝が強いわけやないのに、よう続いちゅう」と笑う。
くねくね道を車で走り、徒歩で配るスタイル。手製のかばんを下げ、狭い裏路地も、急な坂道も、ライト片手にすいすい。「台風の日は、遅うなってもかまんきね」。配達先の温かい言葉がうれしい。
新聞が数日間ポストに入ったままの家があれば、販売所に報告する。「最近は1人暮らしの家も増えゆう。配達は地域を見守る仕事よ」と力を込める。
80歳までは続けるのが目標。「楽しみにしてくれちゅう人がおるきね」。明るい笑顔で、きょうも軽バンのエンジンをかける。(香長総局・福井里実)
ちょっとの気遣い大切に
加納東助さん(72)宿毛市
一部一部丁寧にポストへ届ける加納東助さん(宿毛市和田)
配達していた孫が高校を卒業し、仕事を引き継いだ。「雨の日に車を出して手伝っていて、やり方は分かっていた。自分のペースでできる仕事が合っている」。以来20年がたった。
配達時は霧が立ち込めることもある。「紙面が湿ってしまいそうな日は、ポストにしっかりと収める」。しかし晴れた日は、取り出しやすいようにポストから少しはみ出すように差し込んでいる。「ちょっとしたことだけど、気遣いを大切にしたい」
ただ、長年続けても「やっぱり朝は眠い」そう。それでも「ごくろうさまって言われると、明るい気持ちになる。健康でいる限り続けるかな」とほほ笑んだ。(宿毛支局・坂本出)