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2023.10.13 08:00

小社会 AIと人間味

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 藤井聡太八冠が14歳でプロ入りし、29連勝をしていた頃の話になる。対戦した高野秀行六段が藤井少年をこう評している。「性能の良いマシンが参戦すると聞き、フェラーリやベンツを想像していたら、ジェット機が来た」

 その後も少年は驚異の進化を続ける。対戦から3年後、高野六段は取材に「ジェット機じゃなかったかも」と訂正。宇宙にも行けるスペースシャトルのような、未知なるものにたとえた(文春将棋「読む将棋2021」)。

 将棋界は人工知能(AI)と共存する時代とされる。多くのプロが将棋ソフトで研究を重ねる。羽生善治九段の七冠独占時と藤井八冠の5歳差は「AIの影響」とも。アナログ世代としてはすごい時代だと思ったり、多少の戸惑いもあったり。

 一昨日、インターネットテレビの中継で王座戦を観戦した。ここでもAIが、どちらが優勢かを1手ごとに画面に表示する。最終盤の大逆転。圧倒的な勝率判定だった永瀬拓矢王座が指した「悪手」で、一転して藤井挑戦者の勝率がはね上がった。

 ミスを悟った王座は何度も頭をかきむしり、視線は宙をさまよう。あまりにも人間味のあるしぐさが印象に残った。思えば藤井八冠も形勢が悪くなると天を仰ぎ、がっくりと首をうなだれるなど感情表現は実に豊かという。

 AIと共存する時代も人間が選択し、決断し、責めを負う。勝負の人間くささは変わらない。なぜか安心した。

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