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2023.10.08 08:00

小社会 つるべ落とし

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 ようやく秋らしい気配になってきた。朝晩は肌寒くなり、日中の日差しも随分穏やかに。きょうは二十四節気の「寒露」。露が冷たく感じられる頃を指す。

 この季節の特徴といえば日没の早まりがある。油断しているとあっという間に日が暮れ、「秋の日はつるべ落とし」といわれる。日暮れの速さが「まるでつるべを井戸の底に落とす時のよう」だからという(島崎晋著「日本の四季と暦」)。

 実りの季節でもある。農業なら苦労して育てたものが形になり、来年、再来年、さらにその先の展望へとつながる。ところが…。この秋、展望が開けなくなり、機運もつるべ落としのごとく急落してしまったのが、2030年冬季五輪の札幌誘致である。

 東京五輪を巡る汚職・談合事件が災いし、札幌市などは断念に追い込まれた。開催へ「住民理解が進んでいるとは言えない」という。無理もないだろう。五輪に巣くう闇が明らかになった。34年以降の開催を目指すというが、東京への恨み節が聞こえてきそうだ。

 しかも31年春ごろを目指していた北海道新幹線の札幌延伸も延期される方向となった。工事が遅れており、五輪もないなら慌てなくてよいとの判断らしい。こちらもつるべ落としのトーンダウンか。

 日本には「つるべ落とし」という妖怪の伝説もある。突然、木から落ちてきて人を襲うのだとか。札幌はとんだ魔物に行く手を阻まれたのかもしれない。

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