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2023.10.07 08:00

【ノーベル平和賞】イランの人権改めて問う

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 ことしのノーベル平和賞に、厳格なイスラム体制下で自由を追求し、女性の人権保護運動などを続けてきたイランの女性人権活動家ナルゲス・モハンマディさんが選ばれた。
 モハンマディさんは、活動によって何度も当局に拘束・収監されてきた。今回も獄中での受賞となる。それ自体がイランの人権問題の実態を物語っていよう。
 長年、表現や言論の自由が制限され、女性の人権抑圧が続くイランでは、2003年にも弁護士の女性人権活動家シリン・エバディさんが平和賞を受賞している。
 しかし、当局はその後、エバディさんが率いる非政府組織(NGO)「人権擁護センター」を家宅捜索。平和賞のメダルも一時、押収するなど厳しい姿勢を取ってきた。
 その受賞から20年。今回は人権擁護センターの副代表でもあるモハンマディさんが平和賞を受ける。イランの人権活動家としては2度目、2人目の受賞となる。
 イランの状況が改善されていない裏返しではあるが、ノルウェーのノーベル賞委員会が強いメッセージを込めたともいえるだろう。活動家の運動やイランの女性を引き続き後押しし、イラン指導部に意識改革を求めると。
 改めてイラン指導部の人権意識が問われている。平和賞の意味を重く受け止め、改善が図られることを願ってやまない。
 モハンマディさんは、イラン女性の人権擁護のほか、死刑反対運動などにも取り組んできた。拘束歴は13回に上っており、現在も反国家的なプロパガンダを広めた罪で収監されている。
 イランでは昨年、女性が髪を隠すヘジャブ(スカーフ)のかぶり方が「不適切だ」として拘束された女性が急死。各地で抗議デモに発展したが、当局は徹底的に弾圧した。
 モハンマディさんは刑務所内から抗議デモを支持。さらにデモに参加して拘束された女性が拷問や性的暴行を受けたことを海外メディアに告発してきた。
 ノーベル賞委員会は授賞理由で、「イランにおける女性の抑圧との闘いと、全ての人々のための人権や自由を促進する闘い」とたたえた。イランはもちろん、世界各地で児童婚や教育機会の不平等といったさまざまな人権問題に直面する人々にも、希望となる授賞であろう。
 抗議デモ弾圧では米欧が対イラン制裁を強化するなどしている。一方で、イラン指導部は国際社会の非難を無視。先月、イラン国会でヘジャブを着用しない女性への罰則を強化する法案が可決した。
 外国の政府や組織などと共謀する形でスカーフをかぶらなかった場合は罪が重くなる仕組みだ。米欧への強い抵抗が感じられ、事態がさらに悪化しかねない。
 抗議デモの広がりや国際社会の批判をイラン指導部は直視する必要がある。同時に、国際社会も事態の改善に向かう対話やサポートが欠かせない。

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