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2023.10.05 08:00

【円安150円台】先行き不透明感が強まる

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 外国為替市場は円を売ってドルを買う動きが強まっている。ニューヨーク市場では一時1ドル=150円台を付け、約1年ぶりの円安ドル高水準となった。その後は急激に円が買われるなど荒い値動きとなる場面があった。政府・日銀による為替介入の有無に関心が向けられる。
 米連邦準備制度理事会(FRB)の金融引き締めが長期化するとの観測が広がったことで、運用に有利なドルを買う動きが強まった。米雇用動態調査で求人数が市場予測を上回ったため、米雇用情勢の堅調さが意識された。米長期金利の目安となる10年債利回りは約16年ぶりの高水準まで上昇した。
 これに対し、日銀は大規模な金融緩和を続ける姿勢を変えていない。賃金上昇を伴う持続的で安定的な物価の2%上昇は見通せないとの認識からだ。だが、食料品価格などの上昇で消費者物価は前年同月を継続的に上回り、2%目標を超える伸び率は17カ月連続となっている。
 日米の金融政策の違いから円安が進みやすい。米長期金利のさらなる上昇は一段の円安を招く要因となり、日本の輸入食品や燃料はさらに値上がりする可能性がある。
 企業も過度な円安でコストが増大すると、販売価格に転嫁できなければ収益を圧迫されかねない。業績の悪化が避けられず、賃金上昇や消費の拡大もまた難しくなる。緩和をいかに修正するか、影響が大きいだけに重要な論点だ。
 一方、FRBの利上げ長期化による米景気後退への警戒感は東京株式市場にも及んだ。日経平均株価は前日比700円を超える大幅続落で取引を終えた。約4カ月ぶりに3万1000円の節目を割り込んだ。
 日銀の9月企業短期経済観測調査(短観)は、半導体不足による悪影響が和らいだ自動車生産の回復が続き、大企業製造業の景況感は改善した。宿泊・飲食サービスを含む大企業非製造業も高水準だった。新型コロナウイルス禍からの経済活動の正常化に伴い、インバウンド(訪日客)が増加して押し上げた。
 小幅な改善にとどまるとの市場予測を上回り、堅調さを示した日本経済だが、先行きには不透明感が漂う。欧米での利上げの影響のほか、中国の不動産市場の低迷深刻化や原材料高への警戒感が拭えない。人手の不足感も根強く、営業拡大に踏み切れない状況も指摘される。
 長期金利は日本も上昇傾向にある。財務省は10月発行の10年物国債の入札で、買い手に支払う利子の割合を示す「表面利率」を10年ぶりの高水準となる年0・8%に引き上げた。市場で取引される国債の利回りを反映した。
 実勢に合わせることで、国債発行を通じた資金調達の安定化が期待できる。ただ、経済活動への影響が想定されるほか、国債の利払い費が増えるため財政を圧迫する懸念が強まる。将来の負担増大が危惧されるようでは、暮らしの安心にはつながらない。堅実な財政運営の重要性は一段と高まっている。

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