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2023.10.04 08:00

小社会 物語の終わりに

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 最終話の感動を持ち寄るような人の流れが続き、佐川町「桜座」は満席となった。4月3日から、その平日に紡がれた130回に及ぶドラマが終わったばかりの日曜日である。もう明日から「らんまん」はない。

 その脚本を書いた長田育恵さんが「桜座」のステージに現れた。ふんわり透明な優しい声によって「らんまん」を巡るさまざまが語られていく。なぜ牧野富太郎だったのか。心を震わせたせりふの源泉は? そして孤独だった執筆の時間。

 長田さんの柔らかくも深い言葉に、うなずき続けている人たちの後ろ姿があった。みんなドラマを愛していたのだ。終わってしまった博士の美しい物語を作家とともに慈しむ。貴重で親密な時間と空間が生まれていた。

 「桜座」を後にして長田さんは秋の風が吹く佐川の町を散策した。金峰神社の石段を登る。万太郎の、富太郎の、その幼少からそばにあった豊かで多様な植生に改めて納得する。長田さんは神社の社で手をしばらく合わせた。

 神社を降りてから、あちこちでファンの人たちに囲まれた。ありがとう、ありがとう―口々に感謝を伝える。この4月から平日が楽しみになっていた。そんな声もあった。

 古書も置いているカフェバー「貉藻(むじなも)」にも立ち寄った。長田さんは町の黒岩地区で栽培されている梨をシロップにしたかき氷を食べて「これで私のらんまんも終わりました」と笑った。

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