アンパンマン誕生５０年　ほんとうの正義伝え続ける

2023.10.03 05:00

アンパンマン誕生５０年　ほんとうの正義伝え続ける

高知新聞社

アンパンマンの巨大な像に笑顔の家族連れ。誕生から５０年、世代をこえて多くの人に愛され続けている＝香美市香北町美良布の市立やなせたかし記念館（（ｃ）やなせたかし（ｃ）やなせたかし／フレーベル館・ＴＭＳ・ＮＴＶ）

　高知(こうち)県(けん)出身(しゅっしん)の漫画家(まんがか)、故(こ)やなせたかしさんが生(う)んだ国民(こくみん)的(てき)キャラクター「アンパンマン」が絵本(えほん)で初(はじ)めて出版(しゅっぱん)されてから、１０月(がつ)で５０周年(しゅうねん)になりました。おなかをすかせた人(ひと)に自分(じぶん)の顔(かお)を食(た)べさせる正義(せいぎ)のヒーローは、助(たす)け合(あ)い、分(わ)かち合(あ)う大切(たいせつ)さを今(いま)も伝(つた)え続(つづ)けています。

　広(ひろ)いさばくの真(ま)ん中(なか)。空腹(くうふく)で苦(くる)しんでいる旅人(たびびと)の前(まえ)に現(あらわ)れたのは、ぼろぼろのマントをまとった「あんぱんまん」。西(にし)の空(そら)から飛(と)んできて、地面(じめん)に手(て)をついて頭(あたま)を差(さ)し出(だ)しました。「さあ、ぼくの　かおを　たべなさい」

　フレーベル館(かん)（東京(とうきょう)）の月刊(げっかん)絵本(えほん)「キンダーおはなしえほん」１９７３年(ねん)１０月号(がつごう)として出版(しゅっぱん)された「あんぱんまん」。やなせさんがキャラクターとしてのアンパンマンを初(はじ)めてかいた作品(さくひん)です。

　本(ほん)が出(で)た時(とき)、頭(あたま)を食(た)べさせるヒーローに対(たい)して大人(おとな)たちからは「残酷(ざんこく)だ」というひはんもありましたが、子(こ)どもたちの間(あいだ)では支持(しじ)されるようになりました。いつの間(ま)にか作品(さくひん)はシリーズ化(か)され、ばいきんまんなどのキャラクターも加(くわ)わり、１９８８年(ねん)１０月(がつ)にはテレビアニメ化(か)。アンパンマンは日本(にほん)を代表(だいひょう)するキャラクターへと成長(せいちょう)していきました。

　絵本(えほん)の後書(あとが)きには、こんな記述(きじゅつ)があります。「ほんとうの正義(せいぎ)というものは、けっしてかっこうのいいものではないし、そして、そのためにかならず自分(じぶん)も深(ふか)く傷(きず)つくものです」

　戦争(せんそう)中(ちゅう)の経験(けいけん)で、正義(せいぎ)が簡単(かんたん)にひっくり返(かえ)ることや、飢(う)えの苦(くる)しさを身(み)をもって知(し)っていたやなせさん。おなかをすかせた人(ひと)を助(たす)けるアンパンマンの姿(すがた)で「ほんとうの正義(せいぎ)」を伝(つた)えました。

　香美(かみ)市(し)立(りつ)やなせたかし記念(きねん)館(かん)の仙波()美()由記()事務(じむ)局長(きょくちょう)（４７）は「伝(つた)えたいメッセージを年齢(ねんれい)で区別(くべつ)することはなかった」とやなせさんの思(おも)いを代弁(だいべん)し、「言葉(ことば)は分(わ)からなくても、自分(じぶん)の大切(たいせつ)な部分(ぶぶん)を差(さ)し出(だ)して友達(ともだち)を助(たす)ける自己(じこ)犠牲(ぎせい)の心(こころ)は、子(こ)どもたちに伝(つた)わっていると思(おも)う」と話(はな)しています。

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