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2023.09.28 08:00

【気候変動対策】うわべだけでは進まない

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 地球環境問題で最近、「グリーンウォッシュ」という言葉が使われるようになった。「うわべだけの環境対策」を指す造語である。
 口先は立派だが、成果が伴わなかったり、矛盾した政策を取ったりしている国を皮肉った言葉でもある。日本もまた、世界からは「うわべだけ」に映っていないだろうか。
 ニューヨークで開催中の国連総会や関連イベントで、グローバルサウスと呼ばれる新興・途上国から先進国への批判が相次いでいる。その一つが気候変動対策だ。
 今年は日本だけでなく、世界全体が観測史上最も暑い夏だった。各地で熱波や大規模な山火事、水害などが発生。今月も、リビアの大洪水で1万人を超える死者・不明者が出たと伝えられた。
 専門家はこれらの背景に気候変動があると指摘する。被災地の惨状を知れば、各国による抜本的な気候変動対策や国際的な協調が急務だと痛感する。
 ところが、世界の現実はどうか。ロシアはウクライナに侵攻。世界の関心は気候変動より、ウクライナに向いているとの指摘もある。中国も覇権主義を強めており、国際社会は分断が進みつつある。
 加えて、温室効果ガスの排出量が多い日米中なども、抑制への動きが鈍いと言わざるを得ない。国際エネルギー機関(IEA)によると、世界のエネルギー関連の二酸化炭素排出量は2022年、前年から0・9%増え、過去最大となった。
 途上国などは防災や食料自給も脆弱(ぜいじゃく)で、気候変動の影響を大きく受けやすい。先進国などに不満を募らせるのは無理もない。
 各国の首脳や企業トップらが参加して気候変動対策の加速を論議した「気候野心サミット」では、国連のグテレス事務総長がこの夏の災害に触れ、「人類は地獄の扉を開けてしまった」と警告した。
 カリブ海の島国バルバドスのモトリー首相は「国連安全保障理事会でウクライナを取り上げるように、気候変動を深刻に受け止めてほしい」と訴えた。
 先進国側の発言が注目されたが、日本の岸田文雄首相は発言の機会を与えられず、結局、サミットを欠席している。
 これに先立つ国連総会の一般討論では、岸田首相は演説に立ち、気候変動問題にも触れて各国に協調を呼び掛けた。日本は今年、気候変動対策も掲げている先進7カ国(G7)の議長国でもある。
 それでも発言を求められなかったのは、国際社会の日本を見る目の厳しさを物語っていよう。日本は石炭火力発電に固執しており、以前から批判を受けてきた。同じG7でも、ドイツ、フランス、カナダが発言国に入ったのとは対照的だ。
 日本は脱炭素の取り組みに本腰を入れ、エネルギー政策も見直していく責務があるのではないか。もちろん米欧や中国なども責任は重い。うわべだけ、「やっている感」だけでは事態は打開できない。

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