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2023.09.27 08:00

【経済対策】支出規模より実効性を

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 新型コロナウイルス禍で低迷した経済活動の本格回復へ実効性のある対策を推進したい。財政出動の規模を追い、漫然と施策を重ねるようではかえって負担を膨らませる。対策策定には緊張感が欠かせない。
 政府は経済対策を10月末をめどに取りまとめる。対策を実行する裏付けとなる2023年度補正予算案を編成する。
 岸田文雄首相は対策の5本柱を表明した。物価高対策、持続的賃上げと地方の成長、国内投資促進、人口減少対策、国民の安心・安全に重点を置く。国民に成長の成果を適切に還元すると狙いを語っている。
 軸となるのは物価高に見合う賃上げの実現のようだ。賃上げ促進へ、従業員の給料を増やした企業を対象とする減税制度の強化を想定する。労働者が賃金の高い仕事に就けるようにリスキリング(学び直し)を後押しする。また、地域の実情に合わせて物価高対策を支援する自治体向け交付金追加の検討や、半導体などの国内投資を促す企業支援も盛り込むとみられる。
 課題に対処するために施策を推進していくことは重要だ。ただ、財政規模を膨らませるだけでは効果は期待できない。もちろん必要な対策は行わなければならない。効果を冷静に検討することが基本となる。
 家計を圧迫する物価高対策では、電気・ガス代とガソリン価格の抑制策を、9月末だった期限から年末まで継続することを既に決めている。年明け以降をどうするかが焦点となるが、多額の予算が絡むだけに支援の在り方は重要な論点となる。
 政府はコロナ禍や物価高への対応で膨らんだ財政支出を平時の水準に戻す方針を打ち出している。予算の肥大化に歯止めをかける意向だが、与党からは少なくとも15兆円が必要との声が上がり、20兆円規模を求める意見が出ている。
 引き続き大規模予算となれば財政健全化への取り組みは後退しかねない。財政規律が緩むことがないように意識した対応が必要だ。どの程度にするのか、首相が指導力を発揮しなければならない局面となる。
 暮らしと経済に関する世論調査では、景気が悪くなっているとみている人が8割に上る。経済活動の正常化で昨年よりやや改善したが、物価水準を巡る政府対応には不満が大きい。賃上げに関し、自分や周囲の人の収入が増えているとの実感は極めて乏しく、全体として賃上げが続くとの見方には7割が否定的だ。
 今年は大手企業を中心に高水準の賃上げが行われたとはいえ、実質賃金は物価上昇に追いつかない状況が続く。米国との金利差拡大で円安が進行している。物価高に拍車がかかれば消費を減退させかねない。
 企業業績が良くなり物価と賃金が安定的に上昇する好循環を確実にできるか危うい。人手不足ものしかかる。2%目標を上回る物価上昇が続くが、金融緩和を終わらせる日銀の「出口戦略」は定まらない。先行きは不透明なだけに、施策への信頼は大きな意味を持つ。

高知のニュース 社説

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