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高知新聞PLUSの活用法

2023.09.26 08:00

【インボイス】混乱回避へ丁寧な対応を

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 インボイス(適格請求書)制度が10月に始まる。零細事業者らには事務作業の増加や税負担が増えることへの不安や戸惑いが根強い。言うまでもなく、税制の透明性や信頼性は高めなければならない。円滑な導入へ向けて、制度の周知はもちろん丁寧な対応が求められる。
 インボイスは、売り手の事業者が買い手に対して消費税の適用税率や額を伝える請求書類に当たる。海外でも広く使われている。
 消費税は8%と10%の複数税率となった。仕入れた総額だけでは納税額が計算できなくなり、正確な税額を計算するため導入が決まった。制度の導入により、受け取った消費税が手元に残る「益税」が解消されることも期待される。
 取引先から商品を仕入れたり業務を発注したりした事業者はこれまで、毎年の消費税納税の際に、売り上げに応じた消費税額から取引先に支払った消費税額を差し引いて納付していた。今後はインボイスの発行を受けなければ、原則として差し引く税務処理ができなくなり、その分の税負担が増えることになる。
 一方、発行を求められる側は、これまでは売上高が1千万円以下なら消費税の納付を免除されていたが、免税事業者のままではインボイスは出せない。税務署に登録して制度に参加すると、事業規模にかかわらず納付義務が生じて、手取りが減ることになる。
 制度に困惑する声が上がった。インボイスを発行しないために取引を打ち切られるのではないかという心配や、値引きを求められたりしないかとの警戒感も強かった。
 零細事業者や法人取引が多いフリーランスは難しい選択を迫られたようだ。高知県内の市町村の中には、事業者の負担懸念などから導入の延期や中止を求める意見書を可決する動きもあった。判断を迷う事業者が多いことが映し出された。
 仕入れ側が取引先に発行を依頼するのは、物価高騰などで経営が厳しいことも影響しているのだろう。ただ、一方的な取引の打ち切りや免税事業者への消費税分の割り引き圧力は、独禁法や下請法違反に問われる可能性がある。公正取引委員会が注意した事案も起きている。啓発と監視は引き続き怠れない。
 導入が近づき、消費税の納税義務を負っている課税事業者は大半が申請を済ませたとみられる。免税されている小規模な法人や個人事業主の中には、発注側からの要望を受けて転換する事業者がある一方、慎重な事業者もあるようだ。
 激変緩和策の充実も必要だろう。零細な免税事業者が制度に参加するため課税転換した場合、そのために生じる税負担を軽減する経過措置などがある。こうした特例の周知徹底が混乱回避に欠かせない。
 免税事業者が課税事業者に転換することをためらうのは、そもそも所得が低いからだとする指摘がある。取引関係の検証も課題だろう。制度の充実はもとより、経済活動を健全化する取り組みを進めたい。

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