2024年 04月29日(月)

現在
6時間後

こんにちはゲスト様

高知新聞PLUSの活用法

2023.09.21 08:00

【森友改ざん文書】開示が真相解明に不可欠

SHARE

 夫を自殺に追い込んだのは何なのか知りたいという妻の願いを、司法はまたも聞き入れなかった。国家公務員の政治的中立が政権への忖度(そんたく)で揺らぎ、信頼を大きく傷つけた事案でもある。真相の解明をないがしろにはできない。
 森友学園問題に関する財務省の決裁文書改ざんを巡り、財務省から大阪地検特捜部に提出された関連文書を不開示とした同省の決定取り消しを国に求めた訴訟で、大阪地裁は請求を棄却した。関連文書が存在するかどうかも明らかにしなかった財務相らの決定を適法と判断した。
 改ざんを苦に自殺した近畿財務局の元職員、赤木俊夫さんの妻、雅子さんが提訴していた。国は損害賠償を求めた訴訟では、請求を全面的に受け入れる「認諾」をした。幕引きを図ろうとする姿勢は鮮明だ。
 財務省が2018年に公表した調査報告書は、組織防衛への強い意識が浮き彫りになった。同省理財局長だった佐川宣寿元国税庁長官が改ざんの方向性を決定したと結論づけた。一方で理財局と財務局とのやりとりなどは明記せず、どのような判断で行われたかは明確ではない。
 そうした動きに抵抗して、真相への扉をこじ開けようと資料を集めようとしても壁が立ちはだかる。雅子さんは判決に憤りをあらわにした。控訴した。
 判決は、不開示決定に財務相らの裁量権の逸脱や乱用は認められず、著しく妥当性を欠くとは言えないとした。また関連文書の存在を回答し開示すると、特捜部の捜査の手法や対象、関連事項が察知され罪証隠滅が容易になると指摘した。
 将来の刑事事件の捜査や、公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼす恐れがあるという。確かにそれらが想定される案件はあるだろう。しかし、佐川氏らは有印公文書変造・同行使などの疑いでの刑事告発は不起訴となっている。財務省が改ざんを認めている事案であり、そうした危惧は当たらないのではないか。なぜ改ざんされたのか検証するためにも情報の開示は重要だ。
 雅子さんは国と佐川氏に損害賠償を求めて20年に大阪地裁に提訴した。国は認諾し、佐川氏との訴訟は地裁は賠償責任を否定して請求を棄却した。控訴審も佐川氏らへの尋問を認めないまま結審している。
 赤木さんが改ざんの経緯をまとめた「赤木ファイル」は損害賠償訴訟の審理中に開示されている。ただ、ファイルでは改ざんの具体的な指示系統は判然としなかった。
 実態を明らかにするために、21年に財務省と近畿財務局が報告書作成のために収集した一切の文書を出すように求め、特捜部に任意提出した資料の開示を請求した。国は不開示決定をしたため、取り消しを求め提訴した。真相を追求する粘り強い取り組みが続いている。
 どういう経緯で追い込まれたのか知りたいという思いに国は応える責務がある。岸田文雄首相はかつて、丁寧に説明する考えを示したが、果たされているとは思えない。

高知のニュース 社説

注目の記事

アクセスランキング

  • 24時間

  • 1週間

  • 1ヶ月