2023.09.20 08:00
【副大臣女性ゼロ】多様性尊重の姿勢を疑う
副大臣や政務官は、将来の閣僚を養成する意味でも重要なポストだ。むろん、起用にあたって性別が最優先の条件ではなく、あくまで能力や見識などで選ばれるべきだろう。
岸田文雄首相はこの人事について「適材適所でこのような老壮青、男女のバランスとなった」とした。だが「適材適所」であるなら、なおさら副大臣26人、政務官28人が全員男性という状況は不自然と言わざるを得ない。いびつな現状、政府の姿勢を軽視はできない。
一般的に、一本釣りを含めて首相の意向が強く働く閣僚人事とは異なり、副大臣や政務官は各派閥や公明党の意向を踏まえ、官房長官らがバランスを考慮しながら決める傾向がある。
ポストに就く、いわゆる「適齢期」は衆院議員では副大臣が当選3~4回の中堅、政務官は当選1~2回の若手とされる。衆参両院の自民女性議員は大半がすでに閣僚や副大臣、政務官を経験。自民党内には「女性に適任者がいなかった」との釈明も聞こえる。
そうだとしても、政界で女性が活躍するには構造的な課題があるというほかない。根本的な原因は女性議員の少なさにあろう。
自民出身の議長を含めた衆参両院379人のうち、女性は45人で12%に満たない。これでは顔ぶれが固定され、次のリーダーを育成する仕組みが機能しないのも当然だ。男性が多い現職優先の公認の在り方を見直すなどしなければ、男女格差の是正は実現できまい。
党の体質にも問題がありはしないか。内閣改造の記者会見で、岸田首相は女性閣僚に関し、「女性ならではの感性や共感力を十分発揮してもらいたい」と述べた。この発言に対し、違和感を指摘する専門家は多い。女性という性別の固定観念に基づいた、無意識の思い込みが潜んでいるとの批判が出ている。
自民党は近年、性別にとどまらず多様性への意識が問われる場面が目立つ。LGBT理解増進法や選択的夫婦別姓に関する党内議論では、多様性を尊重する世界的流れに逆行するかのような発言もみられた。
6月に発表された「男女格差報告」で、日本は過去最低の125位で先進7カ国(G7)、東アジア・太平洋地域でも最下位だった。なかでも政治分野の評価は極めて低く、全体の足を引っ張る形となった。
政府は女性版骨太の方針で、企業に役員の女性比率を高めるよう求めている。経済界ももちろんだが、政府・与党こそ自らの問題として捉えるべきだろう。実効性の上がる、具体的な対応が必要だ。