2024年 05月03日(金)

現在
6時間後

こんにちはゲスト様

2023.09.13 08:00

【損保ジャパン】契約者欺いた責任は重い

SHARE

 中古車販売大手ビッグモーターによる自動車保険の保険金不正請求問題は同社創業者に続き、大手損害保険会社のトップが表舞台から追われる事態に発展した。損害保険ジャパンの白川儀一社長は不正の可能性を認識しながら、同社との取引再開を決めていた。
 一般契約者の損害につながりかねないと知りながら、大口取引先との関係維持、利益を優先する経営判断を下した責任は極めて重い。引責辞任は当然だろう。親会社のSOMPOホールディングス(HD)を含め、組織運営の在り方をしっかりと検証し、膿(うみ)を出し切らなければならない。
 車両を故意に傷つけるなどして修理代を水増しするビッグモーターの不正請求は、損保ジャパンとの「癒着」ともいえる関係性が助長したと言わざるを得まい。
 損保ジャパンなど損保各社は昨年1月、ビッグモーター従業員の内部告発から不正を把握。大手3社は事故車両の修理をあっせんする取引を停止した。
 その中で、損保ジャパンだけが昨年7月に役員会議を開き、あっせんを再開した。その根拠となったのが、不正を否定するビッグモーターの自主調査だった。「工場長による不正の指示があった」という告発者の証言を「指示はなかった」と書き換え、原因はあくまで作業や連携のミスだと結論付けていた。
 役員会議では契約者保護の観点から、取引再開に異論を唱える役員もいたが、白川氏は「ビッグモーターの社長を信じるしかない」などと取引再開へと議論を主導した。事前に部下から自主調査結果が改ざんされた内容だと報告を受けていたにもかかわらず、である。故意に判断をゆがめたということになろう。
 損害度合いの査定についても、手続きの一部を省く「簡易調査」の優遇措置を続けていた。そうした対応の見返りに、同社から自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)の契約を集中して割り振られていた。
 記者会見で白川氏は、大口の保険代理店でもあるビッグモーターとの関係が悪化すれば「取引が大きく減る可能性があると危惧した」と釈明した。だがその結果、多くの一般契約者が欺かれ、自動車保険の等級が下がって保険料が割高になったことを重く受け止めるべきだ。
 親会社のSOMPOHDも企業統治の面から責任は免れまい。会長兼最高経営責任者の桜田謙悟氏は損保ジャパンの取締役も兼務している。グループの企業統治を見つめ直さなければならない。
 19日から損保ジャパンとビッグモーターへの立ち入り検査に着手する金融庁も、SOMPOHDを含めた経営管理の在り方に着目しているようだ。損保ジャパンでは不正請求問題のほかにも、企業向けの大口契約で同業他社と事前に保険料を調整した疑いも浮上している。損保そのものへの不信が膨らんでいるといってよい。徹底して実態を解明する必要がある。

高知のニュース 社説

注目の記事

アクセスランキング

  • 24時間

  • 1週間

  • 1ヶ月