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2023.09.12 08:00

【G20サミット】難しくなる合意形成

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 日米欧の先進国に新興国を加えた20カ国・地域首脳会議(G20サミット)は首脳宣言を見送る事態は避けられたが、折り合いを付けるだけでは説得力は乏しくなる。合意形成が難しくなる中、先進7カ国(G7)は存在感を高める対応をとらなければ埋没しかねない。
 採択した首脳宣言は、ウクライナ危機について「国家の領土保全や主権、政治的独立に反する武力による威嚇や行使は控えなければならない」と批判した。また「核兵器による威嚇や核兵器の使用は容認できない」と反対を表明した。
 だが、侵攻を続けるロシアに対する名指しでの非難は避けている。中国とロシアの賛同を優先した形だ。ウクライナ側は「G20が誇れるものは何もない」と反発している。
 昨年11月の宣言では、参加国の大半がウクライナでの戦争を強く非難したと明記した。一方でロシア制裁などに関して異論が出たとも併記して、G7とロシア双方の主張を盛り込んで折り合いを付けた。今回は表現を弱めて宣言をまとめたが、G7側の主張が届きにくくなっている現実を見せつけた。
 ウクライナ侵攻でロシア寄りの中国の習近平国家主席と、ロシアのプーチン大統領は会議を欠席して、G20を重視しない姿勢を示した。次期議長国のブラジルはウクライナ侵攻に関する議論には消極姿勢で、会議の主要議題にも影響を与えそうだ。
 またG20にはアフリカ連合(AU)が加わり、枠組みを拡大することで合意した。AUには約50カ国・地域が加盟する。G20には南アフリカしか加わっていなかった。アフリカの意見の反映は重要だ。
 中ロインドなど新興5カ国(BRICS)は先ごろ、加盟国の拡大で合意した。中ロは「グローバルサウス」と呼ばれる新興・途上国との協力を強化して陣営に取り込もうとする動きを強めている。経済交流の枠組みという性格を変えて、西側陣営との対抗勢力となることを志向する動きと見られた。
 世界の分断や対立を強める存在となりかねないだけに警戒が必要だ。しかし、40カ国ほどが加盟に興味を示しているという。その背景には、ウクライナ侵攻で穀物輸出が停滞して食料危機を招いたことや、気候変動対策などへの不満や不信が挙げられる。途上国の主張を先進国が真剣に受け止めず、課題との向き合い方が不十分との指摘は重い。
 そうした国々をG20へ迎えることで摩擦を弱める効果が期待できるだろう。BRICS内でも米欧との関係が比較的良好な国は政治的な対立に巻き込まれることに警戒感が強い。一方で、AUの動向次第でG7の発言力は弱まりかねない。
 世界経済は、中国の不動産市況の悪化や物価高に伴う欧米の急速な利上げによる景気後退の懸念、途上国の債務問題など重荷がのしかかる。食料やエネルギー価格の高騰、気候変動など山積する課題と向き合い安定成長へとつなげる必要がある。協調した取り組みが欠かせない。

高知のニュース 社説

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