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2023.09.10 08:00

【ASEAN会合】対話を対立回避に生かせ

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 東京電力福島第1原発処理水の海洋放出を巡り、中国は処理水を「核汚染水」と呼び、日本の水産物を全面輸入停止した。科学的根拠に基づく議論も困難な状況にある。
 東南アジア諸国連合(ASEAN)プラス3(日中韓)首脳会議など関連会合では、日中の首相同士が主張をぶつけた。
 岸田文雄首相は中国の対応を「突出した行動」と批判した。李強首相は「健康に影響する」と反論した。対日圧力を強める中国は、処理水の監視結果を客観的に分析・評価する国際的枠組みへの参加を拒否している。協議の場の設置にも応じないままで、強硬姿勢を崩さない。
 対話を重視する日本側は、李氏と会談して対話ムードを高めることを狙ったが、中国は消極的だった。軟化の気配は見せず、個別会談は実現しなかった。
 そうした中、会議に先立って両首相は立ち話をしている。ここでも互いの主張が繰り返されたが、李氏からは両国関係の改善と発展を推進したい意向も伝えられたようだ。
 ASEAN諸国は処理水を巡る日本の対応に一定の理解を示し、問題視しなかった。中国は国際会議で批判への支持取り付けを狙ったが、反応は鈍かった。こうしたことが影響したのかもしれない。
 また、経済に停滞感が漂い、経済的なつながりを無視できない日本との対立を先鋭化させたくない思いがあるのだろう。溝が深まる対米関係をにらみ、日本を引き寄せたい思惑や、対中包囲網を強める日米韓をけん制する狙いもうかがえる。
 いずれにしても、中国側から意思疎通への意欲が示された。何らかの着地点を探ろうとする姿勢に転じたともとれる。10月には平和友好条約発効45周年を迎える。あらゆる機会を生かして関係修復への道を探ることが必要となる。
 一方、ASEAN首脳会議は、域内の諸課題に解決の手だてを打ち出すことはできず、無力感が漂う。ミャンマー情勢には有効な打開策を示せなかった。来年の議長国ラオスは軍政に融和的で、軍政が長期化する懸念が強まっている。
 南シナ海での中国の威嚇への対処方針でも進展はなかった。中国が南シナ海のほぼ全域に自国の権益が及ぶとする新たな地図を発表した。フィリピン軍拠点への補給船団を中国艦船が放水銃を使って妨害する事案も起きている。反発は強いが、批判でまとまりきれなかった。
 ASEANは米中対立と距離を置く。また加盟国は親米、親中に分かれているため立場の違いから明確なメッセージを打ち出しにくいと指摘される。全会一致の原則は尊重されるにしても、歩み寄りを探らないようでは組織の在り方に疑問が向けられてしまう。
 ASEANと日米中ロなどによる東アジアサミット(EAS)は、中国の威圧的行動やロシアのウクライナ侵攻などが非難され、中ロは反発した。深まる分断に対話の重要性は一段と高まっている。

高知のニュース 社説

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