2023.09.08 08:00
【秋本議員の逮捕 】脱原発にも水を差す事件
秋本容疑者は8月に特捜部の家宅捜索を受け、外務政務官を辞任。離党もしたが、政府、与党の一員であった国会議員の活動に絡んだ容疑である。岸田文雄首相の責任は当然、重い。
しかも、自民党議員を巡っては近年、「政治とカネ」の問題が後を絶たない。全く反省していないと指摘されても仕方がないだろう。
政治が信頼は失うのはもちろん、風力発電など再生可能エネルギーの拡大にも水を差しかねない事態だ。検察に徹底捜査を求めると同時に、政府・自民党には危機感を持って事件に向き合うよう求める。
賄賂とされているのは、事業者の日本風力開発側から秋本容疑者に渡った約6100万円だ。
2021年秋ごろ、前社長の塚脇正幸氏らと共同で設立した競走馬の組合に塚脇氏が約3千万円を提供。19年に秋本容疑者が日本中央競馬会(JRA)に個人馬主の登録する際にも、塚脇氏が一時的に約3千万円を用意したという。
特捜部は、組合は実質的に秋本容疑者の管理下にあるとして、資金が賄賂に当たると判断した。一方で、秋本容疑者は「自分も組合の資金を一部負担していた」などとし、賄賂とは認めていないもようだ。
秋本容疑者は自民党の再生可能エネルギー普及拡大議員連盟の事務局長を務めるなど、「脱原発」の旗手として注目されてきた。国の洋上風力発電事業も後押ししていた。
その議員と事業者が資金のやりとりをすれば、疑念をもたれて当然だ。しかも、塚脇氏は特捜部に「資金は国会での質問の謝礼」だったと説明している。
秋本容疑者は東北沖などで進める洋上風力の大規模プロジェクトに絡み、数年前から国会で質問を繰り返すなど活発に動いてきた。
21年に行われたプロジェクト第1弾の入札では、コスト競争力で勝る三菱商事などの企業連合が全てを落札。日本風力開発などが反発していた。秋本容疑者は22年2月、国会で事業者公募の評価基準見直しを要求。運転開始時期の早さをより重視するよう求めた。
その後、第2弾の公募が始まっていたにもかかわらず、途中で基準が見直された。異例のルール変更に疑問の声も出たようだ。
こうした経緯から、適正な変更だったのかも問われる。所管の経済産業省と国土交通省は、有識者会議も経た手続きで適正だったとするが、不透明感は拭えない。国会もしっかりと検証する必要がある。
再生可能エネルギーの拡大は原子力依存からの脱却や、二酸化炭素の排出削減を図る上でも欠かせない。今回のような事件はそんな政策をゆがめる懸念さえある。政府、自民党は事の重大性を深く認識すべきだ。