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2023.09.07 08:00

【性犯罪歴の確認】慎重な制度設計を求める

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 子どもと接する職場で求職者の性犯罪歴を確認する新制度「日本版DBS」について、政府は学校や保育所に義務付ける方針を固めた。学習塾や放課後児童クラブなどは任意とし、国による「認定制」を設ける。秋に見込まれる臨時国会に関連法案の提出を目指す。
 性犯罪から子どもを守る環境づくりの重要性は論をまたない。性犯罪歴のある人物を指導者などの立場で子どもに近づけないことは有効な対策になろう。一方で、憲法で保障された「職業選択の自由」を制限する恐れもある。プライバシーの保護を含めて、制度設計には万全を期す必要がある。
 学校の教員らによる性犯罪が後を絶たない。子どもの安全確保は喫緊の課題であり、対策も進んできた。わいせつ事件を起こした保育士の再登録を一定期間禁止したり、懲戒免職になった元教員の復職を制限したりする仕組みも導入された。
 だが、子どもと接する仕事は多岐にわたり、懸念は尽きない。先月には大手学習塾の講師が教え子を盗撮した事件が明るみに出た。新制度はこうした民間事業者を含め、より幅広い職種でチェック機能の導入を図る。
 こども家庭庁の有識者会議がまとめた報告書案によると、学校のほか認定こども園や児童養護施設などに性犯罪歴の確認を義務付ける。
 スイミングクラブや学習塾などは許認可施設のように公的な監督の仕組みが整っていないとして利用を任意とした。任意業種には「認定制」を創設し、事業者に利用を促す。中小事業者などに浸透するかが焦点となろう。
 ただ、照会できる性犯罪歴の線引きは大きな課題だ。
 不同意わいせつ罪などの刑法犯罪が対象となる見込みだが、逮捕後に不起訴となった場合や、自治体ごとに基準の異なる懲戒処分の取り扱いは、有識者会議でも賛否が割れたという。就業を制限する以上、裁判所による事実認定など、より厳格な根拠が求められよう。
 過ちを犯した人の更生を妨げない視点も重要になる。制度が前科のある人を社会から排除するきっかけになってはならない。被害防止効果との兼ね合いで難しい議論となるだろうが、対象となる犯罪や照会期限などは慎重に検討すべきだ。
 プライバシーの保護も重大な課題になる。広範な職種で性犯罪歴を確認するようになれば、効果は大きい半面、照会した事業者から情報が漏えいする可能性も膨らむ。詳細は法案化の過程で具体化するが、照会に対応する組織や情報管理の在り方は十分に議論して、準備する必要がある。
 日本版DBSが実現すれば子どもを守る環境は一歩前進するとはいえ、完全に性犯罪を防げるわけでもない。有罪判決を受けた加害者が一部にとどまる以上、DBSにも限界がある。子どもに関わる職場、保護者の一人一人が子どもの安全に目を光らせ続けたい。

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