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2023.09.03 08:35

涙の上に立つ 高知空港(南国市)―土佐鳥瞰紀行(98)

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 高知空港北側の道沿いに、「三島村尋常高等小学校跡」と記された石碑がある。三島村は1889年発足。物部川からの水が豊富な稲作地帯で、裏作の「久枝大根」は高知市にも多く出荷された。豊かで、のどかな村だった。

 農村が一転したのは1941年1月の寒い朝。村民たちは小学校の校庭に集められ、村長が声を詰まらせ告げる。村の7割に当たる土地が、軍の飛行場となることを了承してほしいと。

 居並ぶ県と軍の担当者は「お国のため」とだけ。263戸約1500人が、同8月までの立ち退きを命じられた。移転先は用意されず、接収で支払われたお金はすずめの涙。翌42年に村も学校も消えた。

 戦後、飛行場は食糧難から田畑に戻す計画だったが、「中央から遠く離れた高知には飛行場が必要だ」との声も上がる。最終的に、滑走路は高知空港、兵舎は高知大学農学部になった。

 村民の涙の上に立つ、空港と大学。人々の夢と笑顔を運ぶ空の玄関として、平和の礎となる学問の学びやとして、あり続けることを願う。(佐藤邦昭)

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