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高知新聞PLUSの活用法

2023.09.03 08:00

小社会 人間の知見

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 金婚式にちなみ、50年前の1973年を振り返る特集紙面が先日あった。流行歌は「神田川」「心の旅」…。その年の県内10大ニュースもあって、1位は「早明浦ダム完成」。

 3位の「水銀汚染魚騒ぎ」に?となった。当時9歳の小欄はその騒ぎを知らない。この頃の記事を調べると、「汚染魚ショック ついに出漁中止」「安全PRも効果なし」「魚屋さん防戦に懸命」…。

 全国各地で汚染魚が見つかり、高知の海でも微量ながら水銀を検出。不安が広がり、漁業者も苦しんでいた。熊本県の水俣保健所が「原因不明の奇病」を公表して20年ほどたっていた。

 この10大ニュースを目にする直前、たまたま「水俣曼荼羅(まんだら)」(原一男監督)という水俣病を巡る映画を見ていた。3部構成372分もの異色のドキュメンタリーだ。

 メチル水銀がもたらしたひどい公害。しかし、原因企業も当時の化学界の重鎮たちも工場排水との因果を長く否定。医学の知見も及ばず、原因判明後も患者の認定は限定され、多くの死者と患者が出て50年たっても裁判は続いた。ある胎児性患者の「失恋続きの人生」も追った監督は「切なくてね…。泣きながらカメラを回していましたよ」。

 科学は進歩する。つまりそれは、学者や為政者がその時々に「正しい」「あり得ない」と言っていた知見や説明が破綻し、上書きされる歴史でもある。2023年夏。海の力と原子力の初めての物語が始まった。

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