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2023.09.02 08:00

小社会 情報操作

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 この夏に読んだ「B―29の昭和史」(若林宣著)が心に引っかかっている。先の大戦下、米爆撃機B―29の本土空襲で無数の市民が無差別に殺された。悲惨さは日本人なら骨身に染みていよう。では日本軍の空襲はどう考えられていたか。

 著者は当時の詩人、前田林外の詩集「重慶の大空襲」から探る。重慶は日中戦争で抗日拠点だった都市。〈重慶よ、木造建物の燃え易(やす)きは、殆(ほとん)と火薬と同じと知らずや…市民の粗忽(そこつ)や、不注意から、失火! 失火! それが断じて無(な)いとは云(い)へない〉

 空襲火災は建築構造のまずさと市民の不注意で起きた、と言わんばかりなのに驚く。とはいえ、詩が一定受け入れられたのは「非道な中国を懲らしめる」という、日本政府の情報宣伝が大きかった。

 福島第1原発処理水の海洋放出後、中国で日本産水産物の輸入停止が続く。中国発の迷惑電話や日本製品の不買も。本県でも中国人団体客に提供予定だったカツオ料理のキャンセルなど影響が出始めた。反日感情拡大の背景にも中国政府の情報操作がある。

 中国は日中の専門家が放出を科学的に討議する場への参加を拒否。交流サイトへの政府批判は削除する半面、反日投稿は容認している。これでは冷静な議論は深まらない。

 日本製品は中国社会に浸透しており、輸入停止や不買は国民生活にも影を落とそう。国の情報操作で道を誤り犠牲を払うのは、いつの世も庶民である。

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