2024年 04月30日(火)

現在
6時間後

こんにちはゲスト様

高知新聞PLUSの活用法

2023.09.01 08:00

【関東大震災100年】「複合災害」への備えを

SHARE

 関東大震災から、きょうで100年になる。死者・行方不明者は10万5千人余り。地震にさまざまな悪条件が重なった「複合災害」で、日本の歴史でも最悪の人的被害を出したことで知られる。
 地震は避けられないにしても、どう被害を最小化するか。30年以内に70~80%の確率で発生すると予測される南海トラフ地震に向き合う上で、本県にとっては切実な課題であり続ける。大震災発生に由来する「防災の日」に、あらためて命を守るための備えを考えたい。
 関東大震災は相模湾の海底などを延びる「相模トラフ」で1923年9月1日の正午前に発生した。マグニチュード(M)は7・9とされ、今の基準に照らせば震度7~6相当の揺れが広範囲を襲った。
 強烈な揺れはさらなる災害をも誘発した。昼食を準備していた家庭が多く、各地で火災が発生。気象条件も悪く、台風の影響による強風にあおられ、木造住宅の密集地域で延焼が広がった。犠牲者全体の8割以上は火災で亡くなったとされる。ほかにも山間部を中心に土砂災害が多発。沿岸部には津波が押し寄せ、静岡県熱海市では高さ約12メートルに達したという。
 こうした複合災害は関東大震災に限らない。阪神大震災(1995年)は揺れと火災、東日本大震災(2011年)も揺れに津波、原子力災害が重なった。大きな地震に対しては、同時にあらゆる災害への備えが必要になる。
 東日本大震災から12年余り。県内でも津波避難タワーの整備など、公的な対策は一定進んだ。地震時に住宅倒壊や火災延焼の危険性が高い密集市街地でも、区画整理が徐々に進む。だが、高知市では今年3月末でまだ18ヘクタールが残る。地震は人の備えを待ってはくれない。取り組みを加速させたい。
 一方のソフト対策にはどうしても「時間と風化」の問題が横たわる。今年6~7月に行われた世論調査にもその傾向が表れた。大地震など自然災害に遭う恐れは76%の人が抱くものの、56%が十分な備えはしていないと回答した。
 日常生活のなかで、社会が災害への危機感を持ち続けることは現実的には難しい。各地の災害を身近に置き換えて考え、備えを繰り返し意識付けすることが重要になる。防災の日などに行われる防災訓練もその機会となろう。
 関東大震災は災害時の教訓とともに、人権上の重い課題も残した。混乱状態の中で「朝鮮人が暴動を起こす」といったデマが広がり、多くの人が虐殺された。内閣府中央防災会議が09年にまとめた報告書は、朝鮮人や中国人ら千~数千人が犠牲になったと推計している。
 当時の民族差別が根底にあるが、今もヘイトデモや憎悪犯罪(ヘイトクライム)が相次ぐ。近年の災害時にもデマが出回り、交流サイト(SNS)など新しい情報源との付き合い方も求められよう。常に社会の課題と向き合う姿勢が要る。

高知のニュース 社説

注目の記事

アクセスランキング

  • 24時間

  • 1週間

  • 1ヶ月