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2023.09.01 08:00

小社会 大震災の呪縛

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 百年の計、百年の恋、ここであったが百年目…。長い歳月を表す上で象徴的に使われる「100年」は節目としても特別な意味を持つ。関東大震災からきょうで100年。防災への思いを新たにするのは当然として、それにとどまってはいけないと考えていたら、ある新著のタイトルが目に付いた。

 「関東大震災 その100年の呪縛」。気鋭の民俗学者である畑中章宏さんが、自然現象である地震を社会学的、人間学的に捉え、日本人が陥った「呪縛」を論じる内容だ。

 いわく、近代化途上の東京の壊滅は、人々の愛郷心を呼び起こし、やがて「大衆ナショナリズム」につながっていった。また、天罰論によって諦念や精神論が広がり、合理的な対策が先送りにされた―などとし、それらを戦争も含めた近代日本の出来事と関連付けていく。

 その上で、関東大震災の検証と反省が不十分だったと指摘する。震災発生から100年を経たからこそ生まれる視点、得られる教訓もあるのだろう。

 同著が挙げた呪縛には、東京を中心に位置付ける国家観もあった。震災後に浮上した遷都論はすぐに詔書で否定され、国土の中心は東京だという思考が根付いたという。首都直下型地震が起きれば日本がまひすることは容易に想像できるのに、一極集中の解消はまるで進まない。まさに今も続いているといってよい。

 高知県には、百年河清をまつかのような呪縛である。解かれるのはいつのことか。

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