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2023.08.29 08:00

【処理水巡る反応】中国は冷静な行動を

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 東京電力福島第1原発処理水の海洋放出に反発する中国で、反日感情が拡大している。経済活動への影響はもとより、緊張の高まりは人的被害にも及びかねない。中国側に冷静で責任ある対応を求める。
 中国の日本人学校に石や卵が投げ込まれる嫌がらせが相次ぐ。日本製品の不買が呼びかけられ、訪日団体旅行の予約キャンセルが続出した。また、日本国内の個人や団体にも中国から迷惑電話がかかり、困惑が広がっている。
 日本政府は中国に、邦人の安全確保に万全を期すように求めた。ただ、交流サイト(SNS)への日本を敵視する書き込みを中国当局は容認しているようだ。暴力的な反日デモに発展させてはならない。中国は沈静化へ向けた適切な対応をとる必要がある。
 処理水の海洋放出に強く反発する中国政府は、批判の動きを強めてきた。7月には日本から輸入する水産物の全面的な放射性物質検査を始めた。放出に伴い、水産物輸入の停止を全国に拡大するとともに、日本の食品への検査を強化した。食品業界全体への打撃が懸念される。
 日中間には沖縄県・尖閣諸島や台湾問題、半導体規制などの問題や懸案がある。ただ、中国は米国と強く対立し、また国内経済が低迷するため密接な貿易関係がある日本とは決定的な対立関係には至らないと楽観視もされたようだ。
 ところが、日本に妥協しない姿勢を国内に示すため強硬路線を突き進んでいる。中国の対応を見誤ったとする見方さえされる状況だ。
 中国は処理水への非難に各国を巻き込み外交カードとすることを狙ったが、うまくいかなかった。そのためより強く出ざるを得なくなったとする指摘がある。経済の不調から人々の関心を振り向けさせる思惑も取り沙汰される。いずれにしても反日感情を刺激することになった。
 中国は簡単には軟化できないだろう。海洋放出を中止させるため、対日圧力を続けるとみられる。だが、先鋭化は解決を遠ざけてしまう。
 国際原子力機関(IAEA)は包括報告書で、放出計画は国際的な安全基準に合致すると評した。岸田文雄首相は放出の前提とした漁業者の理解について首相は、一定得たとの認識を示す。
 しかし、反対は根強く、風評被害への懸念は拭えないままだ。科学的な安全性はもちろん必要だが、それだけで理解が深まり、風評対策が進むわけではない。放出の影響軽減に向け、首相は政府全体として責任を持って対応すると説明してきた。言うまでもなく、そうした姿勢は国内にとどめることではない。
 政府は、放出を廃炉と福島復興のために先送りできない課題と位置付ける。ならばなおさら取り組みを強化することが望まれる。丁寧な情報発信に努めなければ先行きは一段と厳しくなる。
 中国の威圧は他国に影響しかねない。対話を探り、関係を再構築することが必要だ。

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