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2023.08.26 08:00

【BRICS拡大】責任ある行動につなげよ

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 新興国の台頭は著しい。そうした国々が一大勢力となることで高まる発言力を、国際協力に結びつけていくことが重要だ。対抗する意識が先走っては対立を深めかねない。責任ある行動が求められる。
 中国、ロシア、インド、ブラジル、南アフリカの新興5カ国(BRICS)は加盟国の拡大で合意した。イラン、サウジアラビアなど6カ国に新加盟国の資格が付与され、11カ国体制となる。
 中国の習近平国家主席は、新興国や途上国の共通利益に一致した合意だと述べた。ロシアのプーチン大統領もBRICSの影響力を高めると拡大を支持した。
 BRICSは、経済交流の枠組みという性格を変えそうだ。「グローバルサウス」と呼ばれる新興・途上国の協力を強化しながら、西側陣営との対抗勢力となる動きを強めていく可能性がある。
 拡大への議論は中国が主導した。対立を強める米欧との対抗軸を形成したいという思惑からだと指摘される。輸出規制もあり中国の経済は停滞する気配を見せる。安全保障面での対中包囲網はアジア太平洋地域へと広がるのも背景にある。
 対抗する勢力をつくり出し、国際秩序を米欧中心からBRICS側へと移行させたいようだ。国際的な孤立を回避したいロシアも、中国と歩調を合わせて協力国を広げる狙いがうかがえる。
 こうした中ロの思惑とは連動しないにしても、新興・途上国もまたBRICSに期待を寄せる。40カ国ほどが加盟に興味を示し、うち20カ国は加盟を正式に希望したという。
 接近する理由とされるのは、新興・途上国の主張を先進国がまともに受け止めず、直面する課題に十分に対応できないことだ。最近ではロシアのウクライナ侵攻で穀物輸出が停滞し、食料供給に深刻な影響を受けた。自然災害への危機意識が高まる気候変動対策への支援も満足なものではないとみられている。
 先進国はこうした指摘を謙虚に受け止める必要がある。ただ、食料危機の主因はロシアの侵攻にある。穀物輸送も停滞させている。和平へ向けた取り組みが求められ、各国が協力して進める必要がある。
 気候変動にしても、地球規模の課題であり敵対していては解決が遠のく。先進国と途上国は意識の違いを乗り越えるために対話を重ね、施策を充実させていきたい。
 BRICSは拡大でその存在感を強めるが、一方で加盟国の中には政治的な対立が持ち込まれることに警戒感も根強い。米欧との関係が比較的良好な国にとっては、中ロとの対立関係の中に引き込まれたくないのが本音だ。
 加盟を望む国にも同様の事情がうかがえる。発言力を高め経済的なメリットは期待できるにしても、負の側面もまた無視できない。
 インドと中国は係争地を抱えるなど現状でも一枚岩とは言い難い。拡大のメリットを広く得られるようにする姿勢が欠かせない。

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