2024年 04月29日(月)

現在
6時間後

こんにちはゲスト様

高知新聞PLUSの活用法

2023.08.22 08:00

【ハラスメント】自衛隊の性質で済まない

SHARE

 ハラスメントの被害や問題が多く報告され、組織風土との関連が指摘されたことを重く受け止めなければならない。組織に根付いた思考や行動様式を改めるには相当の覚悟がいる。本腰を入れて取り組まなければ満足な成果は望めない。
 全自衛隊を対象にした特別防衛監察の結果で、パワハラやセクハラなど1325件の申し出があった。元自衛官が性被害を訴えたことなどを踏まえ、防衛省が実施した。
 件数の多さがこれまでの対応の不十分さを物語る。さらに、申し出の6割以上にあたる850件が、内部の相談員や窓口を活用しなかったと回答したことも無視できない。
 活用しない理由として、かえって不利益を受ける懸念や、相談できる環境にないことが挙げられた。相談した事例でも、人事上の悪影響を示唆されたり、加害者に知られたりしたことへの不満が多く出ている。
 これまでもハラスメント対策はとられてきた。しかし、組織全体として機能するような対応ができず、実効性に欠けていたことが浮き彫りになった。
 防衛省の有識者会議がまとめた提言は、ハラスメントを加害者と被害者との個人的関係で生じた個別の事案とみなす傾向があったことに言及した。また、自衛隊の性質から「指導」と「パワハラ」の区別がつかず、上司と部下で認識にずれができるとも分析している。
 防衛省・自衛隊は、組織と隊員の一体性を「家族」にたとえる傾向があるという。確かに厳格な統制が必要で、任務遂行のために厳しい教育訓練や長期的な集団生活が行われる。しかし、家族だから許されると誤った認識に陥りかねない。提言はそのことに真剣に向き合わなかったと批判を向けた。
 また、上司が関与する事案が相次いで発覚するのは、責務への自覚の不足と責任を明確にしなかったことに起因するとの見方を示す。ハラスメントを許容しない組織風土の醸成が途上で、努力も不十分だと厳しく指摘した。
 提言は、ハラスメント防止に組織風土の改革が不可欠とし、処分の迅速化、管理職教育などを求めた。特に強調したのが対策全般への外部の視点の導入だ。教育制度や懲戒処分の基準を見直す際には社会の認識からかけ離れないよう、その意見を参考にするよう求めた。監察結果は、被害初期からの厳正対処や、適正な対処へのプラスの人事評価など改善策を示した。課題は多い。
 防衛省は、早期に導入可能な防止策は2024年度予算案の概算要求に盛り込む方針という。対策を急ぐのは当然だが、組織の体質は簡単には変わらないという冷ややかな見方もあるようだ。重要なのは十分な意識改革であり、それがなければ問題は繰り返されかねない。
 ハラスメントに対する社会の批判意識は高まっている。対応できなければ社会的信頼性を失い、組織の維持にも影響する。強い危機意識で取り組む必要がある。

高知のニュース 社説

注目の記事

アクセスランキング

  • 24時間

  • 1週間

  • 1ヶ月