2023.08.18 08:00
小社会 78年前と変わらない
ヤルタ協定である。ソ連は代わりに、かつて日本に奪われた南樺太や、千島列島の引き渡しなどを約束されていた。ところが日本がポツダム宣言を受諾し降伏するやいなや、米ソに数日間、日本占領を巡って緊張が走る。
時のソ連首相スターリンは米大統領トルーマンに北海道の北半分もよこすよう求め、上陸準備を整えていた。協定にない話でトルーマンが食い止めたが、思惑通りになっていたら、いまごろ日本はどうなっていただろうか。
ロシアに詳しい作家、佐藤優さんの見立てが興味深い。「北海道の北半分と樺太、北方領土、千島列島を併せて、緩衝地帯とする構想がみえる」。米国を意識してそこに親ソ連の新しい国家を設け、日本を分断したとみる。
同じく作家の半藤一利さんとの対談集「21世紀の戦争論」にある。7年前の出版当時は深く意識できなかったが、いまのウクライナを見ていると背筋が寒くなる。ロシアは米欧との関係を強めるウクライナに侵攻。国境沿いに親ロシアの緩衝地帯をつくろうとしている。
「歴史は繰り返す」とよくいわれる。軍拡競争と紛争が続く。世界は78年前とさほど変わっていないようだ。