2024年 04月29日(月)

現在
6時間後

こんにちはゲスト様

高知新聞PLUSの活用法

2023.08.16 08:00

【ハワイの大火】初期対応に問題はないか

SHARE

 火の恐ろしさをまざまざと見せつけられたというほかない。
 米ハワイ・マウイ島の山火事はこれまでに100人に迫る死者が確認された。米国で発生した山火事の犠牲者数では、この100年余りで最多だという。
 いまだに多数の人と連絡が取れておらず、犠牲者がさらに増える恐れがある。救助や安否確認、被災者の支援を急ぐとともに、当局の初動対応が適切だったのかを検証する必要がある。
 火災は8日、複数箇所で同時に発生したとみられている。1週間を経てなお被害の全容は見通せないものの、2200棟以上の建物が損壊し、約9平方キロが焼けた。被災地域への立ち入りが規制されるなど、現地では厳戒態勢が敷かれた。
 特に、マウイ島西部の観光地でハワイ王国時代には首都だったラハイナは壊滅的な被害を受け、歴史的な建造物も灰と化した。再建には少なくとも約8千億円を要するとの推計も出ている。バイデン大統領は未曽有の事態を受け、連邦政府による緊急支援を可能にするよう大規模災害を宣言した。
 今回の山火事には、悪条件が重なっていたようだ。
 現地はことし5月末以降、「フラッシュ干ばつ」と呼ばれる急速な乾燥が進んでいた。そこにハワイ諸島の南方をハリケーンが通過。吹き込んだ強風にあおられて、火勢が強まったという。またかつての農地が荒れ、燃えやすい外来植物が繁殖した影響で炎が広がりやすくなっていたとも指摘されている。
 大規模な山火事とはいえ、なぜここまで人的被害が膨らんでしまったのか。看過できない問題だ。州の緊急事態管理局は、地元当局が携帯電話やテレビ、ラジオを通じて警報を出したと説明している。
 だが、被災した多くの地元住民が危険を知らせる情報が届かず、燃え盛る炎が迫ったり、爆発音を聞いたりしてようやく事態を察知したと証言している。州当局も発生時に警報サイレンが作動した形跡がなかったことを認めたようだ。
 被災者の救助活動や被災者支援が最優先なのはいうまでもないが、果たして「人災」の側面はなかったのか。避難の遅れが人的被害につながったとすれば、徹底的に検証されなければなるまい。
 こうした大規模な火災はいつ、どこで発生するのか分からない。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、地球温暖化が世界全域で熱波や干ばつのような極端な気象に影響を与えていると指摘する。大規模火災の危険性も高まろう。温暖化対策があらためて待ったなしの状況だと認識させられる。
 一方で、身近な地域の防災力も問われている。どんな災害でも同じだが、初動対応と安全な場所への迅速な避難が命を守る鍵となる。南海トラフ地震に備える意味でも、各地の災害を教訓にして、災害時に「人災」の要素を徹底的に排除する備えが求められる。

高知のニュース 社説

注目の記事

アクセスランキング

  • 24時間

  • 1週間

  • 1ヶ月