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2023.08.15 08:00

小社会 終戦の日に

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 玄界灘を望む福岡市の蒙古山の山頂に元寇の慰霊碑がある。鎌倉時代、元と呼ばれたモンゴル帝国が日本に侵攻。数多くの犠牲者を悼み、設けられた。日本人だけでなく、元の兵士も供養する。

 それもあってだろう。2005年の福岡県西方沖地震で倒壊したままになっていたのを昨年、日本、モンゴルの両国関係者が協力して再建した。かつての悲劇を記す碑が時を経て、友好の証しとなった。

 「怨親平等」。仏教で敵・味方を超え、平等に慈しむ考え方を指す。やむなく戦って命を落とすと、たとえ敵兵でも祭って慰霊する。文化勲章受章の仏教学者、故中村元さんは、仏教の国であった日本には元来その精神があったとする。

 ところが、「明治維新の頃から失われたのではないか」と中村さん(著書「仏典のことば」)。日本人は敵や隣人を敬う精神を忘れ、次第に暴走した。異常なナショナリズムがついに亡国を招いたのは歴史が示す通りだ。

 では、敗戦によって日本は心を取り戻せたのか。憲法で国際平和を求め、戦争も放棄したが…。戦後78年、世の中の空気が不穏になってきたのは多くの人が感じるところ。

 きょうは終戦の日。戦争犠牲者の冥福を祈り、非戦を誓いたい。それは日本人に対してだけであってはなるまい。かつての敵兵はもちろん、中国などで日本人が奪った数多く民間人の命にも。歴史の反省と教訓から、いまの世を問う日でもある。

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