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2023.08.13 08:00

【食料自給率38%】生産力の増強へ全力で

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 ロシアのウクライナ侵攻や新型コロナウイルス禍の物流混乱で穀物や生産資材原料の価格が上昇したことは、食料安全保障を強く意識させた。不安解消へ向けた取り組みが欠かせない。安定した輸入の在り方を探るとともに、国内の生産基盤を強化することが重要となる。
 2022年度のカロリーベースの食料自給率は38%となった。前年度と変わらず、過去最低水準から抜け出せていない。
 原料の多くを輸入に頼る油脂類の消費量が減少したことで、前年度の数値を維持した。国産小麦は作付面積が増加したものの、単位あたりの収穫量が前年の豊作から平年並みとなり、漁獲高も減っている。
 生産額ベースの自給率は5ポイント下がり58%となった。国内生産額は増加したが、輸入額がそれを上回り、比較可能な1965年度以降で最低を更新した。
 輸入量自体は前年度と同程度だった。しかし、国際的な穀物価格や肥料、燃油など生産資材価格が上昇して輸入額を押し上げた。外国為替市場の円安傾向が輸入額を膨らませたことも影響した。
 生産額自給率は前年度も同様の要因で4%減少している。輸入価格の値上がりで物価は高騰し、国民生活を苦しめてきた。生産者にしても、生産資材の高騰や価格転嫁の困難さで経営が圧迫されている。
 日本のカロリー自給率は、畜産物の消費が増加するなど食生活の変化で低下傾向が続いている。2000年ごろから40%近辺で推移し、近年はやや下回る水準にある。
 農業政策の指針となる基本計画では、30年度の自給率の目標値をカロリーは45%、生産額では75%に設定している。こうした数値を達成できず、先送りを繰り返すようでは設定に意味がなくなる。
 食料安定確保の重要性が認識される中、輸入依存の低減と国産品の供給拡大は急務だ。目標達成へ効果的な施策を重ねていくしかない。国内生産基盤の強化とともに、各国と連携を図ることも怠れない。
 自給率は低迷しているが、農林水産物・食品の輸出額は右肩上がりだ。23年上半期は、新型コロナ禍の各国の規制が解除され、外食向けが回復した。円安で割安感があることも要因だが、品質への評価が押し上げているのは間違いないだろう。経営の底上げへとつなげたい。
 東京電力福島第1原発事故後から各国が日本産食品に課してきた輸入規制は撤廃が相次ぐ。一方で処理水海洋放出を巡り、中国は検査を強化している。政治的思惑が絡むが、科学的知見に基づく対話が必要だ。
 近年は豪雨災害が多発し、農業生産の基盤も多大な被害を受けている。気候変動による作物の品質低下や収量減少も指摘される。また、輸入依存度が高い麦や大豆への生産転換や飼料の国内生産拡大など、取り組むべき課題は多い。
 高齢化が進み、担い手不足ものしかかる。生産の足腰を強めるために多面的な取り組みが求められる。

高知のニュース 社説

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