2023.08.13 08:00
小社会 中央高の校歌
その日、長男は帰宅するやいなや「お母さん、きょう教室へ行ってきたで」。感極まった彼女が愛車に駆け込んだ時、CDから流れてきた。〈♪知らない所に行きたいな 嘘(うそ)だよ本当はね ここに居たい ここに居たいんだ〉。
不安を抱えたまま新しい世界へ一歩踏み出したわが子。〈♪本当はいつも誰よりも 君の事を想(おも)っているんだ〉。息子との温かな関わりを保ち続けてくれた友達や先生方。湧き出るさまざまな思いをこの曲は全部受け止めてくれる。彼女はそう感じた。
高校野球・夏の甲子園大会で初勝利を挙げた高知中央高の校歌も、矢野さんの作詞作曲。こちらも聴く側一人一人の心に届くように印象深い。〈♪守られているのでなく僕が守っていくもの 陽のあたる教室に風の遊ぶグランドに 忘れてはならない友の涙よ〉。
ポップスのような爽やかなメロディーに乗せて、平凡でも懐かしい学園生活が歌われる。誰もが感情移入でき口ずさんでみたくなる。そんな普遍性も大勢の人に受け入れられる理由だろう。
中央高はきょう履正社(大阪)戦。強豪を倒し、もう一度校歌を響かせてほしい。大切な青春の一こまへ、また一人誰かの記憶をいざなうためにも。