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2023.08.10 08:00

小社会 迷走台風

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 本山町出身の俳人、故・右城暮石さんは84歳の夏、「台風の土用波を見たい」と思い立った。住んでいた奈良から車で紀州熊野へ。激しい風雨にも平然と「土佐も雨のきついところでねぇ」。

 25年前の本紙記事を引いた。暮石さんにとっては台風も、いま一度見つめ直したい古里の自然だったのだろう。台風を季題にした句は少なくない。〈台風の目標によき室戸岬〉〈山洗ひ海を洗ひて颱風(たいふう)去る〉。こんな句もある。〈迷走の紐(ひも)ぶら下げて台風図〉。

 ちょうど、きのう九州の西を北上した台風6号の経路が思い浮かぶ。沖縄を西へ通過したと思えばUターン。次は北へほぼ直角ターン。太平洋高気圧と大陸の高気圧がつくる「壁」や「通り道」が関係して描いた紐らしい。

 「迷走台風」という表現は、気象庁は「台風が迷走しているわけではない」ので使わないという。確かに、台風は自らのエンジンや意思で動くわけではない。ただ、右往左往する6号に「あ、こっちを向いた」と擬人化してやきもきした向きも多いのでは。

 よさこい祭りがきょうから本番に入る。コロナ禍を挟んで4年ぶりの本格開催。可否判断が直前までずれ込んだのも、「古里の自然」の宿命か。鳴子の音が聞こえない夏は回避されそうだが、主催者の言う通り安全最優先で願いたい。

 もとより警戒を緩められない季節は続く。はるか南の海上では台風7号が列島の方をちらちらと見ている。

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