2024年 04月30日(火)

現在
6時間後

こんにちはゲスト様

高知新聞PLUSの活用法

2023.08.10 08:00

【よさこい開幕】節目に「次」を見据えよう

SHARE

 正真正銘の復活だ。高知の夏の風物詩であるよさこい祭りが、きのうの前夜祭で開幕。12日まで土佐路は鳴子の音色に染まる。
 今夏の祭りは二つの点で特別な意義が見いだせよう。一つは、新型コロナウイルス禍によるブランクを挟んでの開催だということだ。
 祭りは2020年からの連年の中止により、継続が危ぶまれる事態になった。鳴子や衣装製作など関連事業が廃れ、チームや会場運営のノウハウなども消えかけた。
 その危機感から昨夏、簡素化する形の「特別演舞」を市街地で開き、物心両面でつないだ。感染が広がる局面での決行であり、リスクも背負った。そうした苦難や苦心を乗り越えた末のフル開催である。
 関係者を苦しめたコロナ禍だが、祭りの存在意義や価値を改めて知り、考える機会になったのは事実だろう。あるのが当たり前ではない、との認識から、祭りの求心力が高まり、次への推進力になったのであれば、中止期間も無駄でなかったと言えるのかもしれない。
 今回の踊り子は県内外157チームの計1万4千人で、コロナ禍前より4千人減った。医療関係チームなどが参加を見送るなど影響は残るが、「よく集まった」との受け止めもある。踊り子らには期するところもあるだろう。存分に踊り、見る人も楽しませてほしい。
 懸念されるのは、救急医療への影響だ。コロナは感染症法の位置付けが「5類」に移り、踊り子や観客に制限はないが、県内の感染者自体は高い水準にある。これに熱中症の患者が加わり、急患の救急搬送先に困るケースが高知市で急増している。
 それぞれのチーム、踊り子とも感染対策や熱中症対策はしっかりと心がけたい。
 もう一つの特別な意味は、70回という節目を迎えたことだ。長い歩みを振り返り、これからの方向性を探る機会としたい。
 課題は少なくない。一つは、商店街がベースの競演場の今後だろう。昨年の特別演舞の参加を見送った四つの競演場をはじめとして、ほとんどが人手や運営費に不安を抱え、状況は年々、深刻になっている。
 今回初めて、県と高知市の職員が各会場に支援に出向くという。さまざまな取り組みを試し、持続可能な仕組みづくりを急ぐべきだ。
 地元の踊り子も右肩下がりが続いている。企業チームは出場経費の負担の重さなどから、ピーク時から半減した。子どものチーム・踊り子も少子化で激減している。踊り子が減れば、よさこいの持ち味でもあるチームの多様性は失われていく。
 祭りの裾野を広げていくことに本腰を入れる時期が来ている。その意味で、今回から高知大学が朝倉キャンパスに演舞場を設ける意味は小さくないだろう。
 今回はフランスとベトナムのチームも初出場するという。「発祥の地」として各地のよさこい文化をつなぎ、広げていく。そのような進化も、もちろん見据えていきたい。

高知のニュース 社説

注目の記事

アクセスランキング

  • 24時間

  • 1週間

  • 1ヶ月