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2023.08.08 08:00

【「政治とカネ」】なぜ繰り返されるのか

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 うんざりを通り越して、あきれるほかない。多くの有権者がそう感じているのではないか。またもや政界で疑惑が浮上した。
 洋上風力発電を手がける日本風力開発側から数千万円に上る不透明な資金を受けたとされる秋本真利衆院議員(比例南関東)が外務政務官を辞任、自民党からも離党した。東京地検特捜部が強制捜査に乗り出している。
 近年、自民党では「政治とカネ」の問題が相次ぐものの、政権与党として説明責任を果たしたとは言い難い対応を取ってきた。離党して幕引きとはなるまい。なぜ繰り返されるのか。危機意識を持った対応が求められる。
 秋本氏は、脱原発と再生可能エネルギーの普及に熱心なことで知られる。再生エネ普及への「切り札」とされる、洋上風力を促進する再エネ海域利用法の制定も国会質問などで後押しした。
 同法に基づき2021年12月、国は第1弾の大規模入札を実施。日本風力開発も参加したが、三菱商事などの企業連合が3海域を独占して落札した。売電価格の安さが評価されたためだったが、業界では独占的な落札に反発の声もあった。
 秋本氏は22年2月の予算委員会分科会で、第2弾の入札に向けて事業者選定に関する評価基準の見直しが必要として「政治判断」を迫った。同様の内容は、日本風力開発の幹部が代表理事を務める業界団体「日本風力発電協会」も提言。実際に新たな選定ルールが導入され、今年6月まで公募していた。
 一方で、秋本氏は競走馬の組合を運営。同社側弁護士によると、同社の塚脇正幸社長は組合設立の21年秋から20回以上にわたり、総額3千万円余りを提供していた。組合員として、馬の購入代金や必要経費を支払っただけで、利益供与には当たらないと主張する。
 だが特捜部は、秋本氏が組合を実質的に管理しており、支払いは質問への「謝礼」で賄賂に当たるとみて捜査。資金提供が秋本氏による国会質問の前後で、同社のような独立系事業者の要望に沿った内容だったことにも着目したようだ。
 国会質問は政策を直接決定するわけではないが、過去の裁判では議員の職務権限と認定されている。今後の捜査で資金提供の趣旨を明らかにする必要がある。ただ、国会活動と利害関係がある事業者との金銭のやりとりは、不適切だったといわざるを得ない。秋本氏は進退を含め、自ら説明する責任がある。
 秋本氏が離党したとはいえ、自民党も無関係とはいえまい。閣僚を含め、所属国会議員にカネがらみの不祥事が後を絶たない。自民党はこれまで独自調査など十分な対応を取らず、当事者の「説明責任」を強調してきたが、自浄作用が働いていないのは明らかだろう。
 繰り返される「政治とカネ」問題で有権者の政治不信が膨らんでいる。政権与党として現状にもっと危機感を持つべきだ。

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