2023.08.06 08:00
小社会 核兵器と氷山
爆発から0・016秒後の様子をとらえた1枚の写真。砂漠に太陽が落ち、その下側がひしゃげてぶくぶくいっているかのような異様な火球が写っている。説明書きによると、幅約200メートルもの放射性物質の玉だ。
黒船で来航したペリー提督の5世代ほど後にウィリアム・ペリーという人がいる。カーター政権で国防次官、クリントン政権で国防長官を務めた。軍事の裏を知り尽くしたその人がいま、核兵器を廃棄しろ、と懸命に警告している。あまりに危なっかしくて人間には管理できない、と。
敵国が核を発射すれば警報が出され、大統領は10分以内に対応を決める。反撃しないと自国の発射基地がやられる。しかし、警報が正しいとは限らない。過去に米国で3回、ロシアで2回誤警報が起きている(ペリー氏らの共著「核のボタン」)。
核のシステムが乗っ取られる心配も消えない。実際、一部の通信システムはハッキングされたことがある。大統領は核の発射コードを記した特殊なカードを携帯しているが、カーター氏とクリントン氏はそれを2回紛失している…。
第2次大戦後、核の惨事が80年近く起きなかったのには幸運もあった。ペリー氏はいまの地球を氷山にぶつかる前のタイタニック号になぞらえている。