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2023.08.05 08:00

【米議会襲撃起訴】民主主義の動揺を防げ

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 選挙による平和的な権力移行を阻止しようとする。民主主義の根幹を揺るがせた未曽有の事件は、米大統領経験者が刑事責任を問われることになった。司法の場での徹底した解明と責任追及が求められる。
 米連邦大陪審はトランプ前大統領を四つの罪で起訴した。2020年大統領選に敗北した結果を覆そうと支持者をあおり、21年の連邦議会襲撃事件を引き起こしたとした。極めて重大な事案だ。
 前大統領は首都ワシントンの連邦地裁に出廷し、無罪を主張した。24年大統領選への再選出馬をにらむ前大統領の陣営はこれまで同様、バイデン民主党政権による選挙妨害で、政治的な迫害だと訴えている。
 前大統領は、米大統領経験者として今年3月に初めて起訴された。不倫もみ消し問題、私邸への機密文書持ち出し事件に続き、今回で3度目となる。ほかにも票集計作業に介入した疑いで捜査されている。
 今回の起訴状は、選挙結果認定を妨害しようと画策し、選挙は不正だったとうそを拡散したことで支持者らの議会議事堂乱入を招いたと指摘する。民主主義の象徴が襲撃される光景は世界に衝撃を与えた。特別検察官は、「民主主義に対する前代未聞の攻撃だ」と批判した。
 前大統領の政治手法を批判する有権者は多い。一方で支持者は捜査に反発し、これまでの起訴を含め司法の政治利用だと結束を強めてきた。前大統領は共和党候補指名争いと連動させ、支持獲得を有利に進めている。世論調査の支持率は他の候補者を大きく引き離す。
 指名争いが本格化する中、ライバル候補の動向にも関心が集まる。前大統領と距離を置く候補や、岩盤支持層の反感を恐れて前大統領との摩擦を避けようとする動きもある。指名争いをいかに生き残るのか、候補の思惑がぶつかる。
 前大統領は指名争いでは優勢だが、本選でバイデン大統領と再対決した場合は互角と見る調査がある。有権者も難しい選択を迫られる。今回の起訴でも前大統領の支持率が上がるとの見方があるが、本選への影響は判然としない。
 共和党は一連の起訴に対抗して、バイデン氏の弾劾調査に乗り出す構えを見せる。次男のビジネスを巡る疑惑への関与をただす。党派対立の一段の激化は必至で、国民意識の分断はより強まりかねない。
 議会襲撃事件は、警察官を含む5人が死亡する惨事となった。極右組織や陰謀論勢力が襲撃に加わった。千人以上が訴追され、禁錮18年を言い渡された事例もある。
 一連の裁判は来年3月以降に開かれる。選挙戦が本格化する中で公判が進む異例の事態となりそうで、審理の引き延ばしも想定される。
 起訴は24年大統領選への出馬資格に影響はない。同時に、出馬で責任を回避することはできない。民主主義への攻撃が繰り返されてはならない。法の支配を強化する必要がある。民主主義の再構築と分断緩和という重い課題ものしかかる。

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