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2023.08.04 08:00

小社会 温室効果

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 宮沢賢治は科学好きの詩人・童話作家として知られた。作品からもそれが何となく感じられるが、実弟が書き残した賢治の座右の書がよく示している。

 「兄の机の上には、いつも化学本論上下と法華経が載っていて、どれほどこの本を大切にしたかしれなかった」(宮沢清六著「兄のトランク」)。「化学本論」とは大正時代の教科書で、当時の世界の研究成果が紹介されていた。

 賢治の知識が光るのが昭和初期の小説「グスコーブドリの伝記」だろう。こんな会話シーンがある。「先生、気層のなかに炭酸ガスがふえて来れば暖かくなるのですか」「それはなるだろう」。いわゆる「温室効果」について展開している。

 1896年、スウェーデンの科学者アレニウスが大気中の二酸化炭素量の気温への影響について発表。賢治はそれを学び、東北を苦しめていた冷害に活用できないか考えたようだ。つまり温暖化を求めた。いまなら、とんでもない話かもしれないが。

 世界中で異常な高温が続いている。日本でも全国15地点から算出した国内7月の平均気温が過去最高を記録した。国連のグテレス事務総長は「地球温暖化の時代は終わり、地球沸騰化の時代が到来した」として先日、温室効果ガスの一層の排出削減を訴えた。

 ことし没後90年の賢治。日本が、世界が、これほど暑くなるとは思いもしなかったろう。いま生きていれば、どんな作品を書くのだろうか。

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