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2023.08.04 08:00

【損保談合疑惑】常態化していなかったか

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 複数の大手損害保険会社が企業向けの契約で、事前に保険料を調整していた疑いが拡大している。端緒となった私鉄大手、東急グループとの契約に続き、同様の疑惑が業種を問わず次々と発覚。価格調整が常態化していた可能性が疑われる。
 価格を共同で決める行為はむろん、独禁法が禁じるカルテルに当たる恐れがある。競争環境を自らゆがめ、企業が負担する保険料の高止まりにつながったとみられる。損保業界の在り方そのものに大きな疑念が生じている。
 問題が指摘されているのは東京海上日動火災保険と損害保険ジャパン、三井住友海上火災保険、あいおいニッセイ同和損害保険の大手4社。一連の疑惑は大企業向けの「共同保険」で発覚した。
 資産規模が大きい企業はその分、災害や事故などでの事業リスクも大きくなる。このため、1社では受けきれないリスクを、複数の損保会社で分散して引き受ける形態が一般的に採られる。契約者が引き受け条件を基に各社のシェアを決め、シェアに応じて保険料や事故時の保険金が決まる。
 談合行為は昨年12月、東急グループの火災保険入札で表面化した。4社の提示した保険料が不自然だったため、疑念を抱いた担当者が確認して、損保会社側も認めた。再入札で保険料は大幅に下がったという。この問題を受け、金融庁は5~6月、保険業法に基づく報告徴求命令を出していた。
 損保各社は社員向けのアンケートを実施。この中で価格調整が疑われる事例報告が数十件以上あったという。東急グループと同じ鉄道会社のほか、石油元売りや鉄鋼など業種も多岐にわたる。
 問題の発覚当初、日本損害保険協会の新納啓介会長(あいおい損保社長)は、談合行為は一部現場の判断だったとの認識を示していた。だが、これほど疑惑が広がっては、個人のモラルの問題とするには無理がある。保険料の低下を防ぐため、事前に調整することが業界の「慣習」となっていたのではないか。疑念は膨らむ。
 背景として、業界の寡占化が指摘されている。損保協会の会員会社は29社あるものの、企業の広範なリスクを引き受けられる規模の会社は限られよう。実際、企業向けの損保市場は大手4社が契約の9割を占めるとされる。寡占の実態と、共同保険の特殊性がカルテルの温床になった可能性は否めまい。
 たとえ「会社ぐるみ」の不正でなかったとしても、企業としてのコンプライアンス(法令順守)とガバナンス(組織統治)に問題があったのは明らかだ。業界全体への不信はこれまでになく高まっている。
 金融庁は4社に対し、追加で報告徴求命令を出して、どこまで価格調整が横行していたか、実態の解明を進める方針だ。公正取引委員会の対応も焦点となろう。とはいえ、各社に自らうみを出し切る覚悟がなければ、信頼回復はおぼつかない。

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