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2023.08.03 08:00

【大阪・関西万博】後手対応が招いた停滞

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 2025年4月に開幕予定の大阪・関西万博の行方に暗雲が漂っている。建設業界の人手不足などで海外パビリオンの建設が停滞し、会場整備費も上振れが続く。開催機運もまだ盛り上がらない。
 万博にかつてのような求心力がないのは確かだろう。だが、世界の英知を集め、地球規模の課題に向き合う国際的な場であることに変わりはない。各国も注目する。開く以上は質を確保し、国民が胸を張れるものであることが望ましい。
 準備遅れの一因には主催者の見通しが甘かったこともうかがえる。危機感を持って対応を急ぎ、必要ならば次善の手に見直すなど柔軟な対応も視野に入れるべきだ。
 万博は「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに、大阪湾を埋め立てた「夢洲(ゆめしま)」で半年間開かれる。150超の国・地域が参加を表明し、訪日外国人客約350万人を含む約2820万人の来場が見込まれている。
 海外パビリオンは目玉の一つとされ、約50カ国が自費で建てる予定となっていた。しかし建設に必要な申請が1件しか出ておらず、間に合わない懸念が膨らんでいる。
 独自のデザインの建物は難易度が高い上、工期も限られ、人手不足に直面する国内ゼネコンが受注に積極的でないことが背景にある。
 ただ、工事をめぐるそれらの懸念は業界側も早くから指摘していた。予想し、対応できたはずだ。
 実施主体の公益社団法人「日本国際博覧会協会」は動きの鈍さを批判されても仕方あるまい。協会は国、自治体、企業の出向者でつくる。「寄り合い所帯」にありがちな当事者意識の欠如、意思決定の遅れで対応が後手になったのではないか。
 工事促進に向けては、各国の発注業の代行や受注する建設業者の支援などといった対策が打ち出され始めている。鋭意、取り組むべきだが、建設労働者を来春導入される残業規制の対象外とするよう求めたのは行き過ぎだった。「いのち輝く」がテーマの万博である。厚生労働省が認めなかったのは当然だ。
 協会発注の工事も資材高、人手不足の影響が及んでいる。これまでの発注分のうち催事場など9件は、当初予定価格より計66億円膨らみ、なお未発注工事が十数件残る。日本政府が出展する「日本館」も予定価格内の応札がなく、随意契約に切り替えた結果、9億円以上増えた。
 万博の会場建設費は1850億円とされているが、このままでは収まらないとの見方が強い。費用は、国と大阪府・市、経済界が3等分する。増額は国民負担に直結する。
 3年前、暑さ対策などを理由に600億円増額した経緯もあり、安易な引き上げは考えるべきではないだろう。万博の魅力を保ちつつ、費用抑制につながる簡素化、効率化に知恵を絞る必要がある。
 万博の不透明な見通しは、課題となっている国民の開催機運にも直結する。懸案の解決を着実に図り、国内外に向けて魅力を発信していくことが求められる。

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