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2023.08.01 08:00

【最賃1000円超へ】中小企業への支援強めよ

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 2023年度の最低賃金(最賃)の目安額が、初めて全国平均で時給千円を超えた。物価が上がる中、働く人が安心できるように賃金水準を引き上げるのは当然だ。一方、中小を中心に企業側の負担感は増し、地域間格差の課題や「年収の壁」問題も残る。政府や自治体は多面的に対応していく必要がある。
 厚生労働省の中央審議会が、最賃を現在の961円より41円増の1002円とする目安をまとめた。引き上げ幅は、過去最大だった22年度の31円を10円上回る。率は昨年の3・3%から過去最大の4・3%となる。
 近年の物価高騰を反映した結果だと言える。全国消費者物価指数(生鮮食品除く)は22カ月連続で前年同月を上回っており、6月も3・3%上昇した。相次ぐ食料品や光熱費の値上げは、最賃付近で働く層ほど負担感が強い。今春闘で大企業を中心に行われた積極的な賃上げの流れを、幅広く波及させるべきだ。
 「成長と分配の好循環」を掲げる政府は、最賃を重視し、かねて時給千円台を目標に掲げてきた。その道筋が見えた格好だ。ただ、それでも十分とは言い難い。先進国の中で日本はなお低水準にある。物価変動を加味した実質賃金は14カ月連続でマイナスで推移している。
 物価高に賃金が置いていかれないようにしているのが実情だろう。働く人の可処分所得を増やし、経済成長につなげるためには、確実で継続的な賃上げが欠かせない。
 一方、経営者側には急速に負担が増す。企業も原材料費や人件費の上昇に直面しており、特に中小企業ほど状況は厳しい傾向にある。
 最賃上げが、経営悪化や雇用の縮小を招いてはいけない。政府には税制優遇や助成制度はもちろん、人件費などのコスト増加を取引価格に反映させられるような環境整備が求められる。企業の自律的な成長へ、生産性や収益力アップなどの支援も強める必要がある。
 大都市圏と地方の賃金格差の問題は残された。
 中央審は初めて、経済情勢に応じた都道府県別の区分を4から3にした。中間層を増やして地域間格差を是正する狙いがあったとするが、東京などAランク(6都府県)の引き上げ目安41円に対し、高知などCランク(13県)は39円とした。高知は892円が目安額になる。この額を基準に地方審議会が協議する。
 格差を放置すれば地方から都会への人材流出の懸念が増す。確かに経済情勢は異なるが、中央審の目安が格差拡大を前提にしているのはいかがなものか。最賃を決める新しい仕組みも検討するべきではないか。
 時給単価が上がれば、税や社会保険料の優遇が受けられる年収の範囲内で働こうとパート労働者らが就業時間を減らすケースが増える。それが、企業の人手不足に拍車をかけることも問題となっている。
 政府は対応策として、企業への助成制度を検討するが「一時しのぎ」の域を出ない。抜本的な見直しの議論も急ぐべきだ。

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