2023.07.31 08:00
小社会 においだけ
土用の丑(うし)の日だったきのう、かば焼きを実演販売するスーパーの店頭でこの話を思い出した。においに誘われて小欄も足を止めたが、なんと1匹3千円以上する。「においをかぐだけなら、ただやろう」と話す別の客もいて、店員が苦笑していた。
ウナギは資源量の減少に加え、折からの物価高もあって高騰。このままではけちでなくても「においだけ」になりかねない。それでもウナギならまだ我慢できる。きつい値上げが生活全般に及んでいる。県内ではきょうからガソリンが上がった。
しんどいのは売り手も同じだろう。コストの上昇を十分に価格転嫁できていない業者が多い。先日、仲間と飲食店に入り、随分と飲み食いしたが、以前と同じ1人5千円足らずだった。顧客が離れないよう、店側もぎりぎりでやっているようだ。
冒頭の落語の続き。男はうなぎ屋の請求に面食らうも、財布から銭を取り出すと、チャリン、チャリンといわせた。「かぎ賃だから、銭も音だけで」と。
厳しい生活にもユーモアや精神的な余裕は忘れたくないが、それにも限界はあろう。政府が言う「成長と分配の好循環」はいつ来るのだろうか。こちらは看板だけ、においだけにならないように。