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2023.07.30 08:00

【概算要求基準】歳出の膨張を危惧する

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 重要施策に予算を振り向けて課題と向き合うのはいいが、規模を膨らませるだけでは効果が期待できないだけでなく財政への負担を大きくする。過度な歳出増につながらないように冷静な判断が求められる。
 政府は2024年度予算の概算要求基準を決めた。岸田文雄首相は予算編成に関連し、新型コロナウイルス禍から経済を正常化させる中で、歳出構造を平時に戻していく方針を強調した。
 緊急時に対処する財政支出を長期化、恒常化させないのは当然だ。また、岸田政権が掲げる「新しい資本主義」の取り組みをさらに加速させると意欲を示している。
 そうした中、岸田政権が力を入れる少子化や物価高への対策は、金額を示さない「事項要求」を認めた。確かに、人口減少や高齢化は待ったなしの対応を迫る。物価変動を加味した実質賃金は低下に歯止めがかからない。手厚い施策で重点的に取り組む必要がある。
 だが、少子化対策の具体的な内容や金額を予算編成の過程で詰めるようでは、施策への検討が十分でないまま、予算規模が先走ることになりかねない。財政状況は厳しい。社会保障費は高齢化などに伴う自然増分を23年度予算に加えた金額まで認めるが、余裕のなさは明らかで、充実にはほど遠い。
 国債の利払いや償還費を含めた一般会計の要求総額は10年連続で100兆円を超える公算が大きい。新しい資本主義関連には4兆2千億円規模の特別枠「重要政策推進枠」を用意する。働き手の能力を高めるリスキリング(学び直し)の支援や、脱炭素関連の投資を拡大する政策への活用などを想定する。
 物価上昇に伴う事業費の増加などにも事項要求や特別枠で対応する方針を示す。要求は膨らみそうだ。厳格に判断する姿勢が不可欠となる。岸田政権の姿勢が試される。
 歳出がかさむ一方、財源確保の議論は先送りされる傾向にある。財政健全化の旗は掲げていても、健全化の道は一段と険しくなる。
 国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)の中長期試算では、高い経済成長率を実現しても政府目標の25年度の黒字化達成は困難視される。財政悪化への危機意識の乏しさが繰り返し指摘される。
 経済財政運営の指針「骨太方針」は、3年間で集中的に取り組む少子化対策の「加速化プラン」推進に当たり、新たな税負担を否定する。裏付けが不明確だ。防衛費は23年度から5年間で総額約43兆円を投じる方針だ。増額分の財源確保は不透明で、増税時期は25年以降への先送りを示唆した。
 施策に対する説明がそもそも不十分で、国民の理解が進んでいるとは言い難い。財源の議論を回避しては施策への信任は得られない。
 予算を巡っては、使途を事前に定めない予備費の巨大化や補正予算への巨額計上など、国会軽視の姿勢が近年うかがえる。その見直しも避けられない。

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