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2023.07.30 08:00

小社会 素人鰻

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 「鰻(うなぎ)」という漢字のつくりにある「曼」は、ずるずると長く尾を引いた形や、なよなよとした様子を示すという。つまり、そんな姿をした魚が「鰻」だとか。

 同じつくりを使う漢字で、「蔓(かずら)」は植物のつる。伝染病がずるずると長引く昨今は、「蔓延(まんえん)」という熟語をよく聞く。式場などに長く張りめぐらす幕は「幔幕(まんまく)」。「幔」だけでも長い幕を意味する。かつての本紙連載「漢字の泉」から引いた。

 長いものはミミズでも苦手という旗本が明治になって、士族の商法で鰻屋を始める落語に「素人鰻」がある。一緒に店を開いた腕のいい板前は酒癖が悪く、もめた末に出て行った。困った主人は仕方なく自分で鰻をさばこうとする。

 へっぴり腰で鰻を捕まえようとするが、ヌルヌルと逃げられてつかめない。懸命に捕まえようと両手で交互につかみながら、とうとう店の外へ。「どこへ行くの」と聞かれた主人は「分かるか。鰻に聞いてくれ」。

 こちらも、かなりの迷走ぶりになっている。来年秋にいまの健康保険証を廃止し、マイナンバーカードと一体化させる政府方針。別人の医療情報が登録、閲覧されるなどのトラブルが相次ぎ、与党からさえも見直しを促す声が出てきた。普及を急ぎすぎたつけが回っている。政府の対応に「慢心」はなかったか。

 きょうは土用の丑(うし)の日。素人鰻ではないが、「どこへ行くのか」と聞いても「分かるか」と狼狽(ろうばい)する政治では困る。

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