2024年 04月29日(月)

現在
6時間後

こんにちはゲスト様

高知新聞PLUSの活用法

2023.07.27 08:00

【休戦協定70年】朝鮮半島和平へ対話を

SHARE

 朝鮮半島では国際法上は戦争状態が続き、同じ民族が軍事境界線と非武装地帯(DMZ)で分断されている。平和協定締結への期待が高まる局面はあったものの実現していない。停滞する対話の再開を探り、緊張緩和へとつなげていきたい。
 朝鮮戦争の休戦協定締結からきょうで70年になる。
 戦争は1950年6月、北朝鮮が韓国に侵攻して始まった。激戦が続き、53年7月に米国中心の国連軍と北朝鮮の朝鮮人民軍、中国人民義勇軍が休戦協定に調印した。
 南北の対立や東西冷戦構造の先鋭化で分断が固定化される中、2000年には初の南北首脳会談が開かれた。統一問題は南北の民族間で自主的に解決し、経済協力や人的交流を推進することを掲げた。
 しかし対話の機運はしぼむ。北朝鮮は戦力増強を図り、06年には核実験に踏み込む。最終的な平和解決である平和協定は結べないままだ。
 南北対話を重視した韓国の文在寅(ムンジェイン)前政権は、18年の南北首脳会談につなげた。朝鮮戦争の終戦宣言を行うことを提案するなど行き詰まりの打開を狙ったが効果はなかった。
 平和協定の締結は南北間だけでは難しいのが実情だ。米国は北朝鮮の非核化を要求する。北朝鮮は米国が望む対話や非核化を拒否し、米国の敵視政策の撤回を求める。18年6月には初の米朝首脳会談が開かれ非核化交渉の進展が期待されたが、翌年のハノイでの会談は決裂した。
 韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)政権は北朝鮮への融和路線を転換した。北朝鮮の軍事挑発に対抗措置を取り、日米韓3カ国の安保協力を強化して、軍事的圧力を強める姿勢を見せている。
 北朝鮮は国連安全保障理事会決議に違反する弾道ミサイル発射を繰り返し、緊張を高めている。大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射は、米韓の圧力に対抗した軍事的攻勢の始まりと位置付けた。核ミサイル搭載可能な米軍の戦略原子力潜水艦の韓国寄港などに、ミサイル発射で米韓をけん制している。
 北朝鮮や中国の軍事動向は、日本の防衛政策にも重大な影響を与えている。他国領域のミサイル基地などを破壊する反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有を打ち出すなど、安全保障政策の転換が進む。防衛予算は安定財源が定まらないまま拡大をにらむ。平和国家の在り方が問われている。日朝の懸案である拉致問題の解決も重視しなければならない。
 北朝鮮は米国との対立を強める一方、中国、ロシアと接近している。休戦協定を締結した27日を対米戦勝記念日と位置付ける。記念式典には中ロ代表団を招き、3カ国の結束を誇示するとみられる。
 対立は偶発的な衝突を起こしかねず、有事に巻き込まれる可能性も生じる。緊張を緩和するために対話の必要性は一段と高まっている。
 韓国と北朝鮮では時間の経過もあって相手側への認識変化があり、南北統一への強い意欲は後退しているとの見方もされる。和平構築へ新たな構想を描くことが求められる。

高知のニュース 社説

注目の記事

アクセスランキング

  • 24時間

  • 1週間

  • 1ヶ月