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2023.07.25 08:00

【カンボジア選挙】独裁を排除し民主化を

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 選挙で権威付けを図り、強権体制を維持したいのだろう。しかし、有力野党を排除した選挙では民主的な手続きを経たとは言えず、独裁色の強まりを印象付けてしまう。選挙の公正や世襲への危惧と真剣に向き合う必要がある。
 カンボジア下院選は、与党カンボジア人民党が圧勝する見通しだ。公式結果は8月上旬に発表されるが、人民党の独自集計ではほぼ全議席を獲得した。フン・セン首相は独裁体制をさらに強固にする。
 投票率は8割を超え、前回選を上回るようだ。フン・セン氏は40年近く首相の座を維持してきた。高投票率は選挙の正統性を誇示するために欠かせないのだろう。
 しかし、政権側が有力野党の選挙参加を認めないのでは、そうした主張も説得力はない。前回2018年の選挙では人民党が全議席を獲得した。だが、政権は前年の地方評議会(議会)選で躍進したカンボジア救国党を解党に追い込んでいる。
 今回も前回に続き、野党不在の選挙となった。救国党の流れをくむキャンドルライト党は、昨年の地方議会選で善戦して唯一の競争相手と目されたが、登録手続きの不備を理由に排除された。
 党幹部への弾圧も強まった。数人が逮捕され、拘束を恐れて国外へ逃れる動きも出ている。人権状況の後退が危惧される。
 ほかにも存在感を示す党は一定あるが、政権批判の受け皿にはならなかった。野党指導者らは無効票での抵抗を呼びかけたが、大きな支持にはつながっていないようだ。
 政権側の世代交代がいかに進むのかが今後の焦点となる。首相継承を図る長男フン・マネット氏が初出馬し、当選を確実にした。1カ月後に継承するとの観測も出ている。
 実戦経験のある軍人で、政治経験はほぼない。選挙戦では温厚さを打ち出して、親近感の演出に腐心したようだ。フン・セン氏の側近の息子らも出馬した。欧米に留学経験もある新たな世代が世襲批判を受け止めて変革へ動くとの期待も一部にあるようだが、体制と既得権益を維持しようとする勢力もまた強固だ。
 フン・セン氏が腐敗の改善には後ろ向きで、強権的手法には国際社会から人権侵害の批判が根強い。首相職を譲っても影響力は維持するとの見方が一般的だ。院政は権力構造をかえって見えにくくする。権力のさらなる集中や野党弾圧を強めかねず、警戒を怠れない。
 カンボジアは1980年代を中心に続いた内戦が終結して以降、堅調な経済成長を続け、特に中国からの投資を呼び込んできた。国軍が全権を握ったミャンマーには融和的な姿勢も示してきた。ただ、中国経済が停滞色を強める中、中国依存を修正するとの見方もでている。
 フン・マネット氏の姿勢は不明だが、対米関係の距離を縮めることも考えられ、動向を注視する必要がある。日本は復興に国連平和維持活動(PKO)などで関与してきた。民主化への取り組みを支援したい。

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