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2023.07.24 08:00

小社会 奇跡のバックホーム

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 野球の神様はいる。そう思うことが、まれだがある。最近ならワールド・ベースボール・クラシック。大谷翔平投手が最後に抑えた打者は、チームの同僚で米最高のスターであるトラウト選手だった。奇跡的な巡り合わせだった。

 元阪神、横田慎太郎さんの「奇跡のバックホーム」にも神様を見た。売り出し中の2017年、脳腫瘍が発覚。寛解したが視力が戻らず、現役を諦めた。19年の引退試合。不完全な視力の中で見せたセンターからの好返球は、壮絶な闘病の歩みとともに語り継がれる。

 その若虎が、28歳で逝った。在阪スポーツ紙がこぞって1面トップ記事で悼んだことが、彼の存在感を物語る。それは単に逸材だったからではなく、「純粋」「努力家」「ひたむき」(各紙より)だった人間性が大きい。

 高知との縁もあった。父は南国市稲生出身の元ロッテの強打者、真之さん。稲生では息子を地元選手扱いし、活躍に一喜一憂した。

 昨年11月には講演活動を始めていた慎太郎さんを稲生に招いた。この時すでに病気を再発していたようだ。地元の世話人は「少しつらそうで。でも1時間前には控室に入り、入念に講演の準備をしていた」。物事に真摯(しんし)に向かう姿勢は引退後も貫かれた。

 神様もどうせ奇跡を起こすなら、病を治してくれればよかったのに。「自分に負けず、自分を信じ、目標から逃げずに前へ」。講演で慎太郎さんの残した言葉を読み返す。

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