2023.07.22 08:00
【コロナ感染拡大】第9波への対策改めて
流行当初より致死率は下がったものの、高齢者らには危険な感染症であることに変わりはない。「平時」に戻った社会経済活動を維持しつつ、いかに感染拡大や死者を抑制するか。心構えを新たに、めりはりの利いた対策が必要となる。
感染症法上の位置付けが季節性インフルエンザと同等の5類になった5月以降、感染状況の集計も「全数把握」から、全国約5千の医療機関での「定点把握」になった。従来より流行の規模感はつかみにくいものの、直近の増加傾向は明らかだ。
厚生労働省が参考値として発表していた5類移行直前の感染者数は1定点当たり1・80人だったが、今月10~16日は平均11・04人で前週比1・21倍に。9週連続で増加した。県内でも1定点当たり13・73人、1・49倍となった。高齢者施設や医療機関で新たなクラスター(感染者集団)も発生している。
県健康政策部は、1日当たり400~500人の新規感染者が出ていた、昨年11月下旬の第8波の増加期と同程度と分析する。「第9波に入ったとは断言できない」としつつ「さらなる拡大が懸念される」として、対応を6段階で下から3番目の「警戒」に引き上げた。
専門家は以前から、夏場に流行する可能性を指摘していたが、データ上に表れたその兆しに、警戒を強めるべきだろう。
ウイルスの変異に伴って、重症化する割合は下がったとされるが、感染力は強まっている。これまでも流行の波ごとに、死者数が増加する傾向がみられる。命に関わりかねない高齢者や基礎疾患のある人をどう守るかが最大の課題だ。
コロナ感染との因果関係ははっきりしないものの、県内では救急搬送の受け入れ先がすぐに決まらない「困難事例」の割合も4・6%に上昇した。コロナ前の2019年7月は1・7%で、すでに一般の救急医療に影響が出始めている可能性もある。医療現場の逼迫(ひっぱく)を回避するための対策が重要さを増す。
流行への対策を積み重ねてきたとはいえ、第9波となれば5類移行後、初めての流行になる。従来、行政が担ってきた入院調整は原則、医療機関の間で行われている。経験と教訓を生かしながら、十分な備えが要る。
人の往来や接触が増えた一方で、濃厚接触者も特定されなくなった。感染状況の把握も週ごととなって流行の実態と時間差も生じ、爆発的な感染拡大が起こった場合などの対応が懸念される。十分に想定して行政や医療、救急機関などの連携を確認しておきたい。
医療逼迫を防ぐには一般の対応も重要だ。5類となってマスク着用などは原則、個人判断になったが、自らの健康を守る対策はもちろん、周囲にうつさない配慮も求められる。