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2023.07.21 08:00

【ふるさと納税】小手先の対応でよいのか

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 ふるさと納税制度のルールが10月から変わる。地場産品に該当するかどうか曖昧な返礼品が増えているため、基準を厳しくする。集めた寄付の多くが経費に消えている状態もあり、その改善も図る。
 問題のある状況に手を打つのは当然の対応だ。だが、地方自治体が寄付を獲得するために過度な返礼品競争を繰り広げている構図そのものは依然、残る。
 ふるさと納税は、都会に住む人が古里に恩返ししたり、関心のある自治体の活性化を応援したりするのが本来の趣旨である。その趣旨が軽んじられたままでは、小手先の見直しだと言わざるを得ない。
 2008年度に始まった制度は、さまざまなゆがみを指摘されながら取り繕うような対応でこれまで続いてきた。開始から15年を経た今、見直しの議論を本格化させるべきではないか。
 10月に予定する変更は、返礼品競争が過熱してきた中で導入した19年のルールを、さらに厳格化する形になる。
 総務省は19年、返礼品を「寄付額の3割以下の地場産品」と定めたが、他地域原産の熟成肉や精米を地場産品扱いにするケースがあるため、同じ都道府県産に限る。他県産の家電と地元特産品をセットにする例もあったため、地元産が占める金額を7割以上とした。
 また、送料や事務費を含めた経費も「寄付額の5割以下」としたが、独自の解釈で実際は5割を超えていた自治体もあり、それを修正する。
 これらの「再定義」が物語るのは、どんなルールを設けたとしても、消費者が欲しがる返礼品を構えるために抜け道を探す自治体が出てくるということで、いたちごっこが続く可能性がある。本県でも奈半利町によるルール違反があった。
 確かに、返礼品ビジネスによって地域に産業が育ち、経済が活性化したケースはあるだろう。ルール内で知恵を絞り、成果を出した事例もあったに違いない。
 だが、制度の本来の趣旨に照らし合わせると、返礼品を制度の中心に位置づけることはできない。
 返礼品目当ての寄付は、消費者には損得勘定しかない場合も少なくなく、「官製通販」ともやゆされる。特産品があるかどうかで寄付額が左右されれば、自治体間の格差拡大を助長する。財政力を調整する仕組みとしても不完全だ。
 本来なら行政サービスに充てられる財源である寄付の半額が経費に充てられる実態もいびつだ。所得税を多く納める富裕層ほど受ける恩恵が大きい制度にも疑問の声はある。
 そもそも税は、住んでいる自治体に納めてサービスを受ける「受益者負担」が原則だ。納税先を選べる仕組みはあくまで例外であり、基本は抑制的であるべきだろう。
 本来の趣旨に沿う寄付としては、被災地を支援したり、志のあるプロジェクトを応援したりする事例などがある。返礼品にウエートが偏らない在り方を探っていく必要がある。

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