2024年 04月29日(月)

現在
6時間後

こんにちはゲスト様

高知新聞PLUSの活用法

2023.07.20 08:00

【保険金不正請求】説明不足に不信拭えぬ

SHARE

 自動車保険の不正請求などが問題になっている中古車販売大手ビッグモーター(東京)が、外部弁護士による調査報告書を公表し、不正を認定した。車両を故意に傷つけて請求額を水増しするなど極めて悪質な行為が横行していた。
 利益を最優先し、法令を軽視するいびつな企業風土の一端が浮かび上がった格好だが、まだ不正の全体像が解明されたとは言いがたい。企業の責任として、社会に説明する姿勢が求められる。
 中古車の販売や買い取りをメインに全国で300を超える店舗を展開する同社は、自動車整備や車検事業も手掛け、30カ所の工場を構える。ここが不正の温床となった。
 報告書などによると、元本部長が工場に対し、売り上げの架空計上など粉飾に当たる会計処理を指示。これに伴って、不正請求は遅くとも2018年ごろまでに一部の工場で始まっていたとみられる。
 靴下にゴルフボールを入れて車にぶつけたり、工具でひっかいたりして傷を増やし、不要な板金作業や部品交換で1台当たりの修理費用を水増し。損害保険各社に自動車保険の不正請求を繰り返していた。
 損保会社の被害はもちろん、必要のない保険を使って等級が下がり、保険料の負担が増えた契約者も多数に上るだろう。最終的な不正請求の件数や被害額は、なお判明していない。同社では車検事業でも不正行為が相次ぎ、複数の工場が運輸局から民間車検場の指定取り消し処分を受けている。
 不正を生んだのは「従業員が物言えぬ」企業風土にほかならない。不祥事を起こした企業に通底する要因といってよい。
 同社では工場長の降格処分が相次ぎ、22年までの3年間で延べ約50人が対象になった。弁明の機会も与えず、処分理由も明確に伝えなかったという。報告書は、こうした抑圧的な人事で「黙って経営陣に従うことを余儀なくさせる企業風土が醸成された」と指摘する。
 経営陣はさらに、本来は車の状態で変わる修理費に関して営業ノルマを設定。圧力に耐えかねた工場長同士の情報交換でさまざまな不正の手口が広がっていったという。半ば「企業ぐるみ」の不正とみられても仕方があるまい。
 問題はこれだけではない。経営陣は内部告発で22年1月ごろに不正請求を把握したにもかかわらず、当初は実態調査を行わなかった。
 損保各社が同6月、不正を認めない同社に対して、第三者による調査を要求。ことし1月になってようやく外部弁護士による調査を開始した。企業統治の在り方はもちろん、法令順守の意識も極めて希薄だったのではないか。
 同社は、この報告書とともに再発防止策を公表した。しかし、自社のホームページに掲載しただけでは説得力を欠こう。一連の不祥事で信頼は地に落ちた。説明責任を果たさないままでは、不信を一層深めることになる。

高知のニュース 社説

注目の記事

アクセスランキング

  • 24時間

  • 1週間

  • 1ヶ月