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2023.07.18 08:00

【NATO拡大】緊張緩和の道も探れ

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 対ロシア包囲網が強化され、欧州の安全保障環境は転換していく。緊張を高めては不測の事態を招きかねない。対話を探り緩和への動きにつなげることが重要だ。
 北大西洋条約機構(NATO)はスウェーデンの加盟に向け批准手続きに入る。難色を示していたトルコが加盟容認に転じた。先のフィンランドに続き32番目の加盟国となり、北欧全土がNATO入りする。
 スウェーデンは19世紀初めのナポレオン戦争で敗れて以降、軍事的中立政策を維持してきた。しかし、ロシアのウクライナ侵攻を受けて世論は加盟支持へと動き、非同盟の外交方針を転換した。
 加盟への最大の難関となったのはトルコだった。エルドアン大統領は、クルド系住民が多いスウェーデンはトルコ内の非合法武装組織を支援していると主張してきた。一方、トルコは米国製F16戦闘機の追加購入を求めていた。
 加盟反対は売却承認を米国から引き出す思惑があったとされる。米国が売却方針を示したことで容認した。今後は米議会の動向が焦点となる。エルドアン政権に批判的で売却には消極的だ。バイデン政権の指導力が改めて試される局面となる。
 NATOが32カ国体制となることで、ロシアに対する防衛力が一層強化される。プーチン大統領にとっては大きな誤算だろう。
 ウクライナに侵攻した目的の一つにNATO拡大阻止が挙げられた。しかし、強硬な姿勢は欧州の安全保障への意識を激変させ、反発と警戒感を強める結果となった。事態は思惑とは正反対の方向に進んでいることを重く受け止めるべきだ。
 スウェーデンと同時に申請し、先に正式加盟したフィンランドは第2次大戦でソ連に敗れて国土の1割強を割譲し、戦後は中立を国是としてきた。ロシアとの国境は1300キロにわたる。これまでの加盟国が接する合計を上回る長さだ。
 スウェーデンは陸上での国境は接していないとはいえ、北欧5カ国とバルト3国が全てNATOに加盟することになる。バルト海沿岸の緩衝地帯の変化は大きな影響をもたらしかねない。
 集団防衛を定めるNATOは、東欧諸国などに多国籍部隊を配置して有事への即応性を高めてきた。部隊の増員も進めつつ、対ロシア抑止力を強化している。安保環境の変化は、緊張緩和へ向けた対応がこれまで以上に重要となる。
 北欧2カ国の加盟に立ちはだかったトルコはロシアとの関係を維持し、ウクライナ侵攻を批判する欧米とは一線を画す。ウクライナとも良好だ。自国の思惑を振りかざすだけでなく、安定へ向けより積極的な役割を果たすことが求められる。
 一方、NATO加盟で北欧2カ国が中立の立場から行ってきた軍縮や非核への取り組みも変質しかねない。安全保障は多面的な対応が不可欠だ。これまで積み重ねてきた実績を生かしながら、新たな役割を模索する必要がある。

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